〝意外〟な対戦要望も… 5年ぶり「新日本VSノア」対抗戦に高まる期待と交錯する思惑

2021年12月05日 07時00分

対戦希望選手に意外な選手の名前を挙げた高橋ヒロム(東スポWeb)
対戦希望選手に意外な選手の名前を挙げた高橋ヒロム(東スポWeb)

【取材の裏側 現場ノート】新日本プロレスとプロレスリング・ノアの対抗戦が来年1月8日横浜アリーナ大会で行われる。2016年末以降に交流が途絶えていた両団体は、約5年ぶりに再び交わることになる。 

 両団体の交流の始まりはノアの旗揚げ2年目にあたる2001年まで遡る。永田裕志と秋山準が行動を起こしたことで扉が開かれ、同10月の新日本東京ドームに秋山が参戦。翌年1月の東京ドームでは新日本マットでGHCヘビー級王座戦(秋山VS永田)が行われた。
 
 さらに02年には選手の大量離脱により危機に瀕した新日本の現場責任者・蝶野正洋が三沢光晴社長に直談判。5月東京ドーム大会で蝶野VS三沢の一騎打ちが実現する。蝶野が「あの時、三沢社長が手を差し伸べてくれてなかったらたぶん新日本は潰れてた」と振り返るように、団体存亡の危機を対抗戦で乗り切った過去がある。

 以降も両団体の交流は続く。09年には三沢社長が亡くなり、2010年代以降は新日本が業界の盟主に返り咲いたことで両団体の力関係は逆転したが、16年末までは良好な関係が築かれていた。5年以上も関係が途絶えたのは両団体の歴史のなかで初めてのことだ。

 今回の対抗戦は「プロレスの力でファンがコロナ禍から立ち上がる心の原動力に」という両フロントの合致から実現に至った経緯がある。殴り込みなどの行動は今や昔の話なのか、ここまで団体主導が前面に出される対抗戦は珍しく、それだけに選手の反応も多種多様だ。オカダ・カズチカは「興味がない」と断言したが、ノアの清宮海斗は「レインメーカーとやらせていただきたい」とそのオカダを対戦相手に指名。IWGP世界ヘビー級王者の鷹木信悟も、希望相手候補に中嶋勝彦や丸藤正道といった具体名を挙げている。

 新日本担当の記者が取材していても、選手によってスタンスは全く違う。頑なにノーコメントを貫く選手もいる。そんななかで高橋ヒロムは「いまはベスト・オブ・ザ・スーパージュニアにすべて集中しているから、俺から特に言うことはないですよ。ただ『誰と戦いたいですか』と聞かれてあえて答えるとすれば…覇王選手かな」という一見すると〝意外〟な要望を、BOSJ自体の記事とは併記しない約束でコメントしてくれた。16年11月に凱旋帰国を果たしたヒロムは、ノアとの交流断絶後に一躍ブレークを果たした。今回の対抗戦でどのような存在感を発揮してくれるのかは注目したい。

 一方のノアからは武藤敬司が「今は昭和じゃねえんだ」として「見てる人がハッピーになるようなものがいいと思う」と提言したのが印象的だった。今回の対抗戦には収益の一部をコロナ対策のため日本赤十字へ寄付するチャリティーマッチの側面もある。90年代の新日本とUインターのような団体の存亡をかけた戦いよりは、11、12年の東日本大震災復興支援チャリティー興行「ALL TOGETHER」のようなドリームマッチを提供する舞台という方が武藤のイメージに近いのかもしれない。

 ファンの現在の最大の関心事はどういったカードがラインナップされるかだろうが、選手の反応だけでもこれだけ複雑な思惑が絡み合っているのだから当然、一筋縄ではいきそうにない。過去を掘り下げるのか、未来に目を向けるのか。勝負論に徹したタイトルマッチが組まれるのか、豪華メンバーを揃えるドリームマッチが組まれのか。完売と増席を繰り返すチケットを見ても分かる通り、高まるファンの期待にどう応えるのか。両団体にとっても腕の見せどころとなる。

(プロレス担当・岡本佑介)

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