10日のノア東京・後楽園ホール大会で行われたGHCヘビー級選手権は王者の丸藤正道(35)が小島聡(44=新日本プロレス)の挑戦を退けV6に成功した。試合後は鈴木みのる(46)率いる「鈴木軍」が乱入。3月15日の有明コロシアム大会で、みのるとのV7戦が濃厚になった。王者は満身創痍になりながら団体をけん引し続けているが、原動力は13年前に出会ったアスリートたちだ。

 苦しかった。小島の重いチョップ、エルボーの前に、丸藤は苦悶の表情を浮かべた。3度狙った不知火はいずれも不発。だが、必死にチャンスをうかがい続けた18分過ぎ、ラリアートを狙った小島にカウンターの虎王(二段式ヒザ蹴り)を決めると、ここから一気にたたみかけた。不知火と2発の虎王を浴びせ、最後は変型エメラルドフロウジョンで激闘を制した。

「あの人(故三沢光晴さん)の七回忌もあるし、あの人の技で決めたかった」とリング上で語った王者は首の骨が変形しており、“爆弾”を抱えながら過酷な防衛ロードを歩み続けている。エネルギーになっているのが、トップアスリートたちへのライバル心だ。

 2002年3月に左膝前十字靱帯を断裂した丸藤は、9か月間の長期欠場を強いられた。リハビリ中は都内の国立スポーツ科学センター(JISS)に通い続け、五輪やサッカーなど各種目のトップアスリートたちとともに過酷なメニューをこなした。中でも年齢が近いハンドボール日本代表の宮崎大輔(33)やレスリング元世界女王の山本聖子(34)らと親交を持ち、刺激を受けた。

 翌年1月に復帰を果たすことができたが、その後に痛感したことがある。「宮崎くんたちは有名な人間になっていったけど、同じ“プロ”でもプロレスラーは世間に知られていない」。プロレスラーの世間的知名度を高めたい――。その思いを常に抱きながら、リングに上がっているという。

 次なる標的も現れた。試合後のインタビュー中に、4日の新日本東京ドーム大会で抗争が勃発した鈴木軍8人がリングになだれ込み、王者はボスのみのるにスリーパーで絞め落とされた。

 こうなれば決着をつけるしかなく、3・15有明大会での防衛戦が濃厚に。団体創立15周年のメモリアルイヤーとなる2015年も丸藤は対世間を意識して方舟マットを引っ張る。