全日本プロレス「旗揚げ記念シリーズ」(29日、山形市総合スポーツセンター)で行われた3冠ヘビー級選手権は、王者のジョー・ドーリング(32)が挑戦者の潮崎豪(32)を下し、3度目の防衛に成功した。10日前には海外で防衛戦を行ったドーリングの名は各国に広まっており、世界一のプロレス団体「WWE」が再び熱視線を送っている。

 王道トーナメント覇者の潮崎とは、これまで4戦して1分け3敗で、一度も勝利がない。しかし、ドーリングは過去の対戦成績など参考にならないことを証明してみせた。序盤からラリアートで場外に叩き落とすなど、パワー全開。力ずくの投げっぱなしジャーマンでは、110キロの潮﨑が軽々と宙を舞った。

 中盤にチョップで反撃を受ける場面もあったが、強靱な肉体ではね返すと、14分過ぎにハイライトが訪れた。ダイビング式のショルダータックルを空中でキャッチすると、場外マットにデスバレーボムで叩きつける。これで大ダメージを与えると最後は必殺のレボリューションボム(旋回式パワーボム)で完勝した。

「今日は特別、強烈なのをお見舞いしてやった。ミーのパワー、スピード、正確さには誰も勝てない」

 2007年に留学生として来日したドーリングは、195センチ、135キロの恵まれた体格を武器に急成長。10年にはWWEからオファーが届き、ファーム契約を結んだ。一軍出場を目指して育成部門であるFCW(現NXT)でトレーニングを積んだが、左ヒザを負傷。1年もたたないうちに解雇された。秋山準社長(45)が「悔しさは、あるだろう」と心境を代弁するように、夢半ばで破れたことが現在の原動力になっている。

 それも、ベルトを巻いたことで評価は急上昇。18日(日本時間19日)にカナダで史上初の海外3冠戦(対ライノ)を開催したことで「WWEは常に各国のメディアをチェックしている。3冠ベルトを持っているのは大きいし、まだ30代。今後(オファーの)可能性は、あるでしょう」(WWEジャパン関係者)と、再び注目選手の一人として浮上しているという。

 ドーリングは「WWE? ハハハ。もしかしたらチャンスがもう一度くるかもしれないが、今はオールジャパンで暴れ回るだけだ」。

 王者での越年が確実になった暴走機関車が、来年も王道マットを席巻しそうだ。