【お宝写真館】写真は1962(昭和37)年8月19日、東京・渋谷のリキ・スポーツパレス入り口階段で撮影された一枚。「死神酋長」を名乗りネーティブアメリカン風の衣装に身を包んでいるのが、まだデビュー前の19歳のアントニオ猪木だ。

 これはこの年の秋からフジテレビ系で放送された梶原一騎原作の少年向けテレビドラマ「チャンピオン太」の撮影中のもの。猪木青年は栄えある第1話「死神酋長」に、悪役第1号の死神酋長役として出演。ウルトラマンにおけるベムラー、仮面ライダーにおける蜘蛛男のような大役を射止めたにもかかわらず、どこか猪木青年の表情は不機嫌そうだが…。

 劇中、死神酋長は怪力で郵便ポストや街路樹を地面から引き抜き、車に投げつけるなどの大暴れ。あらゆる食べ物を手づかみで食べ散らかす野蛮ぶり。

 それほどの強さを誇りつつも、なぜか力道山との対戦では、キチンシンクを繰り出す程度で、力道山の容赦ないボディースラムでマットに叩きつけられ(ペチャッと、やや弱々しくも見える受け身の姿勢はすでに完成している!)、空手チョップの乱れ打ちの前に、あっさりと敗戦。その後は、腹いせに道場で練習中の主人公・太を襲撃。怒りの首絞めで圧倒するも、太が無意識で繰り出した新必殺技「ノックアウトQ」の餌食となる見事なやられっぷりだった。

 力道山とのバトルシーンはリキパレスで撮影されたが、他のシーンは別のスタジオでの撮り。猪木は「たしか日活のスタジオに行かされて撮影したのを覚えている。弁当を3つもらってスタジオの隅で食べて帰ってきたことしか覚えてないな。ムッフフ」と撮影の思い出を語る。

 ジャイアント馬場、大木金太郎、マンモス鈴木ら他の門下生たちは、それぞれ師匠・力道山の存命中にタッグを組んでいるが、猪木だけはなし。だがドラマ撮影用とはいえ、力道山と戦う姿がフィルムに残されているのは猪木だけだ。ちなみに、力道山は死神酋長を気に入り、猪木のリングネームを「死神酋長」にしようとしたエピソードもある。

 このドラマには他にも大木金太郎、グレート小鹿ら当時の若手選手が、不可解なメークや覆面、コスプレで悪役に変身し多数出演。後に猪木と小鹿が“コスプレ好き”になったのは、この体験のせい?