IGF総帥の“燃える闘魂”アントニオ猪木氏(71=次世代の党参院議員)が主催した19年ぶりの北朝鮮プロレス大会「インターナショナル・プロレスリング・フェスティバルin平壌」(8月30、31日=柳京・鄭周永体育館)は2日間で約3万人の観衆を動員し、大成功のうちに幕を閉じた。拉致問題の進展が望まれるなか、独自のスポーツ外交に動く猪木氏だが、来年はさらなる大仕掛けを用意。またまた物議を醸しそうな4つの仰天構想とは――。

 猪木氏は今回の平壌大会について「19年前(の『平和の祭典』)と比べて、若い人がたくさん見に来てくれた。この国が変わっていくのと同じですよ」と感想を語った。さらに「日本人の中には北朝鮮の街は映画のスタジオみたいと言う人もいる。道を歩いている人たちが用意されたものだってね。確かにそういう時代もあったかもしれないが、エキストラがこんなにいたら大変ですよ(笑い)。評論家には北朝鮮に行ったことない人もいるんじゃないか」と闘魂節を全開させた。

 大会を無事に成功させた猪木氏は、次々に新たな構想も明らかにした。来年は朝鮮労働党設立70周年、1995年の「平和の祭典」から20周年の節目を迎える。平和の祭典で2日間38万人の大観衆を収容したメーデースタジアムが現在改修中なのは、来年の記念イベントの準備のためと言われており、第3弾となる大会も浮上。猪木氏に“特命”が下れば、今回ゲストとして極秘裏に招聘に動いた米国の歌手、マドンナ(56)も目玉の一つになるだろう。

 また十数年前から、朝鮮半島を南北に分断している北緯38度線付近での大会開催を目指してきた。今大会を終えても「北朝鮮と韓国の国同士の関係もあるから、いろいろ慎重にならないといけないところもあるが、38度線でやりたいと前から言っていたからね。やれるならやりたいね、ムッフフ」とその意思は変わっていない。

 すでに10月の開催に向けてIGF関係者が動いているとの情報もある。韓国内の38度線付近に遊園地があり、そこの駐車場がとても広くプロレスイベントの開催にうってつけだという。平壌大会に引き続き韓国でしかも38度線付近となれば、2つに分かれている両国の南北統一へのメッセージになる。

 さらに来年は新たな外交にも力を入れる方針。「来年は北方領土に絞っている。『飛鳥』みたいな旅客船で乗りつけてね。リングを置くなんてたいして時間かからない。ロシアからは(元PRIDEヘビー級王者)ヒョードルを呼べばいい」。こちらも長年の夢だった「北方領土プロレス」の実現についに動きだす。

 ただ、現在の日露関係は日朝関係以上に複雑な状況だ。ロシアのクリミア侵攻以来、ウクライナ情勢は緊迫の一途。欧米諸国によるロシアへの批判や制裁が強まるなか、日本は北方領土問題との兼ね合いで慎重なかじ取りを迫られている。

 今秋にはプーチン大統領(61)が来日し、安倍晋三首相(59)との首脳会談が予定されているが、ロシアは8月に北方領土で軍事演習を行い、日本政府は苦虫をかみ潰した。そんな状況のなか、猪木氏が一石を投じることになる。猪木氏は旧ソ連時代に「レッドブル軍団」を来日させた実績があり、現在もロシアとはパイプがある。

 北方領土へは旅客船を使ってリングや機材、観客を運搬。素早くリングを設立し、現地の人を加え、2000人から3000人規模の大会開催を描いている。猪木氏はあくまでもスポーツ外交として日露間の関係の改善を目指すというが、またまた波紋を呼びそうだ。

 さらには印パ情勢でも「国境にワガという村がある。そこでインドとパキスタンに2つリングを置いてね」(猪木氏)。ワガは東がインド、西がパキスタンに属す。猪木氏は12年12月、ワガに近いパキスタンのラホールで大会を成功させた。今月中旬にはスリランカを初訪問し、インドの大統領に縁の深い著名な高僧との会談を予定。興行実現の糸口を探る。 

 この日、猪木氏は「ハナ、トゥル、セ、ダー!」と朝鮮語の「1、2、3、ダー!」を披露。平壌市民も拳を上げた。今後も物議を醸すイベントを仕掛けるのか。