【お宝写真館】狭いエレベーター内にギュウギュウ詰め。密着しているのはアントニオ猪木、女優の倍賞美津子さん、ビル・ロビンソン、カール・ゴッチ。1971(昭和46)年3月29日、東京国際空港(羽田空港)で撮影された一枚だ。

 男子一生のうちにはいろんな“不覚”が存在するが、なかでも結婚前に恋人や婚約者とイチャイチャしている場面で師匠や先生、先輩などと出くわしてしまうことも、大きな不覚の一つ。恥ずかしいやら照れくさいやらバツが悪いやら…。

 猪木はこの時、ロサンゼルスでジョン・トロスを破り、ユナイテッド・ナショナル・ヘビー級王座(UN王座)を奪取し、その場で応援のためロス入りしていた人気女優・倍賞さんとの婚約を発表。帰国と同時に空港内で普段のプロレスマスコミだけでなく、多くの芸能マスコミに囲まれ会見を行った。

 猪木と倍賞さんはパンアメリカン航空1便でロスから帰国したが、偶然にも同じ便に搭乗していたのが、国際プロレスの「IWAワールドシリーズ」に参加する猪木の師匠・ゴッチと、後にたった一度の名勝負を繰り広げるロビンソンだった。機内で猪木から倍賞さんを紹介され、婚約を報告されたゴッチは「レスラー仲間として、教え子として大変うれしいことだ」と祝福した。

 エレベーター内でニヤニヤ笑顔で見つめる師匠のゴッチに対して、猪木の何ともバツの悪そうな表情が印象的だ。

 この時点で猪木と何ら面識がなさそうなロビンソンだが、猪木が右手に持つバッグに入っていたUNヘビー級のチャンピオンベルトを、6年後に自らが巻くことになる(77年3月=ジャンボ鶴田から奪取)とは夢にも思わなかったはず。

 入国審査所でゴッチ、ロビンソンと別れた猪木は、空港特別室にてUNベルトを高々と掲げつつ、王座奪取と倍賞さんとの婚約会見に臨んだのだった。