全日本プロレスの3冠ヘビー級王者・曙(44)が二重苦に陥った。18日の東京・後楽園ホール大会で若武者・宮原健斗(25)の挑戦を受ける曙は、16日の千葉大会で右ヒジを負傷した上、過労による体調不良を告白。破竹の快進撃を続けてきた元横綱が、ついに3冠王座陥落の危機。まさに土俵際となった。

 この日、6人タッグ戦による最初で最後の前哨戦に出撃した曙は、悪夢のような結末を迎えた。

 初挑戦で史上最年少戴冠を狙う宮原は、三角絞めと腕ひしぎ十字固めの新複合技「スネークリミット(SL)」で勝負を仕掛けてくる。曙は一度こそはSLの動きを見切ったものの、アクシデントが発生。エルボー弾をかわされた際、右ヒジに210キロの全体重がかかってしまった。完全なる自滅だ。

 自ら攻撃ポイントを与えた形となった曙は張り手で一発逆転を試みるも、その右腕をキャッチされてSLでガッチリと捕獲されてしまう。体をバタつかせたが、最後まで脱出できずにチームまでもが敗れ去った。

「俺がベルトを取って、この全日本に新しい風を吹かせる。あえて言う。腕を壊しにいく」と血気盛んな挑戦者とは対照的に曙は半失神状態。

「SLの威力はよく分かった」と収穫を口にしつつも「(会場から自宅まで)運転できない。宮原、運転しろや!」と八つ当たりするほどダメージは深刻だった。

 さらに、体調も万全とは言えない。曙は「熱はないんだけど、カゼ気味。疲れが抜けない」と打ち明けた。2・23沖縄大会で勝利した3冠戦以降も、イベント出演などでオフはほとんどなかったという。その証拠に、試合中も「ゲホッ、ゴホッ」とせき込む場面が何度も見られた。

 曙は2年前の8月、初の電流爆破マッチに出陣するも極度の緊張と過労がたたり、決戦後に急性肺炎を患い、生死の境をさまよった。今回も同様の事態に陥る可能性は十分にある。王道戦士を片っ端から蹴散らしてきた曙政権も、ここで終焉か――。