五寸釘デスマッチで世界初の落下!! 「どうせ落ちない」客の予想を覆す

2020年11月08日 10時00分

レザーフェイスに五寸釘ボードに突き落とされた松永。頭、背中に完全に釘が刺さっている

【ミスター・デンジャー松永光弘 この試合はヤバかった】数々のデスマッチを繰り広げてきた松永光弘氏だが、レザーフェイスと戦いTKO負けしたスパイクネール(五寸釘)デスマッチ(埼玉・戸田大会)では“世界初”を経験した。

【1992年12月20日 松永光弘VSレザーフェイス】

 当時すでに、五寸釘デスマッチは世界中で行われていたデスマッチでした。私の知っている代表的な試合は、アントニオ猪木さん対上田馬之助さんの試合。あとドリー・ファンクJr.対アブドーラ・ザ・ブッチャーの試合(エプロンに五寸釘ボードを敷く形式)をプロレス雑誌で見ています。

 私がこの試合形式に挑戦してみようと、ホームセンターで五寸釘を見ると「思ったより、先はさほど鋭くない」という感想でした。そして発見したのは、猪木さんと上田さんの試合で使用された釘は、三寸釘である可能性が高いということです。

 三寸釘を使用した理由はすぐに分かりました。五寸釘は機械では打てず、一本ずつ全て手作業になります。三寸釘は機械で打てますから作業効率の関係で三寸釘になったのだと思われました。W☆INGから五寸釘ボードの製作を頼まれた業者は全てが手作業でしたから大変だったと思います。

 マスコミ向けの公開実験で五寸釘ボードの上に横になってみましたら、あまりの痛みに飛び起きました。

「ちょっと計算が甘かったかな」と焦りました。五寸釘の釘同士の幅は5センチ。幅を3センチにすることも検討しましたが、予算的に無理でした。

 しかしながら、準備に余念がない我々に対して、お客さんは冷ややかでした。「どうせ落ちないだろう」との見方だったのです。それもそのはず、世界中で行われていたデスマッチではあったものの、五寸釘ボードへの落下は一度もないのです。当初チケットはあまり売れませんでした。

 それで我々は「落ちた方が負け」とルール変更しました。するとチケットは飛ぶように売れました。やはりお客さんはこのデスマッチに残酷な期待をしています。

 しかしながら落ちるといっても落ち方によっては大惨事になります。落ちた時をシミュレーションして、実際に練習してみました。リングのエプロンから突き飛ばされたり、体当たりされたりを想定してリング下のマットに落ちてみるのですが、肩から落ちてしまったり、手をついてしまったり、どれも大惨事になるような落ち方にしかなりません。

 尻から落ちるのが一番安全に感じましたが、練習では一度たりとも尻からの着地はできませんでした。

 正直、恐怖を感じて焦りました。デスマッチを売り物にしていく中で毎回のように経験することですが、シミュレーションをしていく過程でうまくいったためしはなく、命の危険を感じます。

 試合結果は、体の大きいレザーフェイスに体当たりされての落下。尻から落ちて背中をつくという一番安全な形での落下をして、事なきを得ました。映像を見ると最後までサードロープをつかんでおり、尻から落ちるのは、人間の身を守る本能なのかもしれません。五寸釘デスマッチ世界初の落下でした。

 ものすごい悲鳴と怒号の交錯する中心にいることが何だか不思議な感覚でした。

 ☆まつなが・みつひろ 1966年3月24日生まれ。89年10月6日にFMWのリングでプロレスデビュー。数々のデスマッチで伝説を作り、2009年12月23日に引退試合。現在は現役時代に開店した人気ステーキハウス「ミスターデンジャー」(東京・墨田区立花)で元気に営業中。

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