1961年9月12日 力道山の活躍で…全米で空手チョップが大流行

2020年09月02日 12時00分

ルター・レンジ(右)に空手チョップを叩き込む力道山(62年1月)

【プロレスPLAY BACK(98)】米国から来日する選手が激減した現在、逆に日本人選手が世界最大のプロレス団体「WWE」で活躍している。スマックダウンタッグ王座を中邑真輔、ロウ女子王座をアスカが持ち、NXT女子王座には紫雷イオが君臨する。

 外国人との抗争が日本中を沸かせたプロレス創成期から考えれば夢のような話だが、同じような現象を起こしたのが日本プロレスの祖・力道山だ。1952年にプロレス修行のため渡米して以来、日米で空手チョップを武器に多くの外国人選手を震え上がらせた。61年9月12日発行の本紙では、米国で湧き起こった「空手チョップブーム」について分析している。

「プロレスの本場米国では今、空手(チョップ)が大流行しているという。来日して力道山と対戦した選手のほとんどが空手を使っているようだ。しかし危険が伴うため、一部の州では空手を禁止している。本場で大流行する空手の実情を関係者に聞いてみた。

 まず『空手が流行している』とのニュースをもたらした“アンデスの恐竜”エルド・ボグニは『空手チョップは頸部や胸を強打する強烈な殴り方だそうだが、私が日本に来た目的はこの目で見て確かめ自分の技にするためだ』と語った。日米のプロレス事情に詳しい沖識名レフェリーは『空手チョップは見よう見まねで使っても、そう効果のあるものではない。使う選手が増えてきたのは、教えている人間がいるのでは』と説明する。

 では誰が教えているのか。ゼブラ・キッドの証言はこうだ。『確かに東洋流の変わった戦略法、特に力道山の空手チョップに似たバッティングがはやっている。私の友人でこれを使うドン・レオ・ジョナサンは、柔術のバッティングだと説明していたよ』。“黒豹”ドン・マノキャンは『初めて空手を見たのはグレート東郷やデューク・ケオムカとハワイで会った時だ。その時、危険な死の武術だと感じた。私はのぞいただけで練習はしなかったがね』と言う。

 以上の証言から考えると、やはり米国では空手チョップに似た技が流行しているようだ。だがゼブラは『確かに強力なカウンターブローで恐ろしい決め技だ。生命の危険すら伴う。事実、米国のプロレスラーで死の一歩手前までいった人がいる。だからネバダ、カリフォルニア、オレゴンなどの5州が空手を禁止している。禁止されれば覚えても仕方ない』と明かす。一方でどんどん流行する空手チョップ。それは力道山の爆発的人気ゆえである」(抜粋)

 かなりファンタジーに満ちた記事だが、試合中に空手チョップを受けると「反則だ」と訴える外国人選手は多かった。州ごとのルールが厳しかったことは確かで、翌62年7月、力道山はロサンゼルスでカリフォルニアルールの“流血試合禁止条項”に泣き“銀髪鬼”フレッド・ブラッシーにWWA世界ヘビー級王座を奪還された。(敬称略)

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