狂虎シンが見せた笑顔

2009年12月25日 14時27分

インドの狂虎タイガー・ジェット・シンの狂ったような目を真正面から見て、そして作り笑いをせず話を聞くようになってからは叩かれ、殴られ、守護神サーベルの餌食になる回数はグーンと減った。巡業に出たら〝狂虎〟シンが食事をしたい、生ビールを飲みたい、あるいは体調管理のために病院に行きたい、と言い出した時は何をさておいても同行した。

 そんなある日、狂虎シンが「お前、トロント(カナダ)のミスター・オバタを知っているのか」ポツリと言い出した。

 私事で恐縮ですが、学生時代の記者は合気道漬けだった。私立大学の運動部、それも武道系となると支離滅裂。4年生・神様、3年生・天皇、2年生・人間、1年生・奴隷以下のたとえがピッタリだ。記者が奴隷以下の1年生だった時、天皇のような存在の3年生にミスター・オバタ(小幡宰)先輩がいたのだ。先輩は真の侍。大学卒業と同時にカナダ・トロントに渡り合気道の普及に体と命を賭けた。勤務先はカナダ・トロントの日本領事館。

 そこで狂虎シンと我が先輩は知り合った。狂虎シンが来日するたびに労働ビザを発給していたのが先輩だった。ある日、狂虎シンが日本での自分の活躍を知らせようと本紙・東スポを先輩に見せたという。ジックリと東スポを見ていた先輩が記者の名前を発見。「こりゃワシの後輩だ。ミスター・シン、よろしく頼むよ」とカナダ・トロントから記者の記者活動をプッシュしてくれたのだ。

まさに記者にとって先輩は天皇陛下のようだ。

 いつの日か「お前や、東スポのカメラマンと酒を飲むと体調が狂う。いつまでたっても乾杯、乾杯で酒に終わりがないもんな」と狂虎シンが苦笑いを見せた。苦笑いとは言え、あの狂虎シンに笑顔を浮かばせた時はなぜかうれしかったものだ。

 その狂虎シンが腹の底から見せた満面の笑顔を記者は何度も見た。それはインドからの苦学生に対してだ。狂虎シンが見せた笑顔の意味はナンなのだろうか。

(続く)

(プロレス記者の独り言:川野辺)

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