執刀医が語る鉄人「小橋さんは特別な存在」

2013年05月08日 11時30分

【連載4】5・11武道館 さらば鉄人 小橋建太

 小橋建太(46)にとって、レスラー人生最大の危機は2006年6月に発覚した腎臓がんだった。執刀医の横浜市立大病院の中井川昇医師(48)が、がんさえも克服した鉄人の引退に際してメッセージを送った。

 

 小橋の腎臓がんが発覚したのは06年6月。小橋は当時、命の危機に面していたにもかかわらず、脳梗塞を克服した髙山善廣の復帰戦(同年7月)出場を直訴していた。

 

 中井川医師:病気を治すのは最後で、目の前の仕事、約束を全部果たさないと、という感じ。だから最初の外来で2~3時間は話をしました。「がんを治すことを第一に考えないと、最善の治療は受けられませんよ」と言い続けました。

 

 幸いにも手術後の経過は良好で、復帰を目指してトレーニングが再開された。腎臓を一つ摘出した小橋が再びプロレスラーの肉体をつくるのは、タンパク質の摂取制限など困難も多かった。それでも07年12月、小橋は奇跡の生還を果たした。

 

 中井川医師:すごかったよね。神様みたいだった。手術の前に「生きていれば、いつかプロレスができる」という話をしていて、復帰戦が終わった後は「小橋さんにとって生きているってことはプロレスをしてることなんですね」と言いました。

 

 小橋の復活は、他のがん患者にとっても大きな励みになった。

 

 中井川医師:外来の患者さんで「私も頑張らなきゃ」と言う方もいます。「小橋さんのサインをもらえたら治りそうな気がする」と言う小児科の患者さんには、小橋さんが会ってくれた。腎がんに関わっている人、全てにとって特別な存在なんです。

 

 腎臓がんの再発率は2~3%と言われ、今でも小橋は年に2回以上の検査を受けているが、数値は全て良好だという。それは腎機能低下による引退を避けるべく尽力してきた中井川医師にとっては、せめてもの救いだった。

 

 中井川医師:他のケガは知らないので、余計なことは言えないんですが…。がんを克服して、がんになる前の仕事に戻った。それだけで僕は十分だと思う。同じ病気になった人の支えになってくれて、ありがとうございました。「プロレスラー・小橋建太は、がんに勝った」でいいんじゃないですかね。人生はこれからの方が長いので、また一緒にやっていきましょう。