45回目を迎えた東京スポーツ新聞社制定「2018年度プロレス大賞」選考委員会が12日、東京・江東区の東京スポーツ新聞社で開かれ、最優秀選手賞(MVP)は新日本プロレス・棚橋弘至(42)が4年ぶり4度目の受賞を果たした。

 MVPの候補には棚橋、ケニー・オメガ(35)、オカダ・カズチカ(31)の3選手の名前が挙がった。現IWGPヘビー級王者として世界中で高い評価を受けるケニー、5月にIWGP王座新記録となる連続防衛12回を達成したオカダの実績に対し、棚橋はG1クライマックスでの復活Vが高く評価された。

 また主演映画「パパはわるものチャンピオン」の公開、プロレスラーとして初めてTBS系人気番組「情熱大陸」に出演するなど、リング外でもプロレスの普及に尽力。「レスラーとしての活動の幅が広く、プロレスの社会的地位を向上させた」「プロレスの面白さを全国、まだファンでない人たちに伝えた」と賞賛の声が相次ぎ、1回目の投票で23票中18票を集めて4年ぶりのMVP返り咲きを果たした。

 波瀾万丈の一年だった。1月の札幌大会で鈴木みのるに敗れてIC王座を失い、右ヒザ負傷で欠場を余儀なくされた。復帰シリーズの「NEW JAPAN CUP」は準優勝に終わり、5月の福岡大会ではIWGP王者オカダに挑戦するも失敗。自身の保持していた同王座連続防衛記録V11を更新され、V12の樹立を許した。

 誰もが棚橋時代の終焉を覚悟した中でのG1制覇は、大きな感動を呼んだ。勢いは衰えず来年1月4日の東京ドーム大会でのIWGP挑戦権利証の防衛を続け、年間最大興行での王者ケニーへの挑戦へこぎつけた。その一方で、リング上と並行してメディア出演でプロレス普及に努め、業界への貢献度の高さも突出していた。

 4度目のMVPはアントニオ猪木の6度に次ぐ歴代2位タイ。天龍源一郎、武藤敬司に並んだ棚橋は「すごいところまできましたね」と満面の笑みを浮かべつつ、4年ぶりの主役奪還をかみ締めた。「プロレスを見たことない人にいかに届けるかを常に考えていて、気づいたことは一般的な知名度と動員は比例する。『クソ有名になります』と言い続けてきて、それが成就した一年だったのかな。インフルエンサーという言葉がありますけど、他力本願じゃなく、だったら俺が有名になればいいじゃんって」と充実の一年を振り返った。

 浮き沈みの激しいドラマチックな棚橋のレスラー人生は、平成のプロレス界と重なる部分が大きい。2000年代には「暗黒時代」と呼ばれ、観客動員も激減した。

 だが、棚橋を筆頭としたレスラーたちのたゆまぬ努力とファンサービスが結実し、新日プロはV字回復を果たした。その立役者となった“平成の大エース”こそ、平成最後のMVPにふさわしい。

「まだ2年連続(MVP)を取ったことがないんですよね。平成最後のMVPなので、新元号最初のMVPも取りますよ。“元号またぎ”します。『100年に一人の逸材』感が増しますね」と予告した棚橋が、来年もプロレス界をけん引する。

 なお、授賞式は来年1月17日に都内ホテルで行われる。