心を動かしたのは何だったのか――。女子プロレス界のエース・紫雷イオ(28)が29日に都内で会見し、6月17日の東京・後楽園ホール大会を最後に所属のスターダムを退団、新たな世界に挑戦すると発表した。具体的な移籍先についての言及は避けたが、世界最大のプロレス団体「WWE」であることは確実。海外志向を促したのは、あの女子プロレスラーの存在だった。

 白いジャケットに黒のミニスカートという清楚な装いで登場したイオは、いつになく緊張した表情でマイクを握った。そして「今後のプロレス生活のさらなる飛躍を目指し、退団させていただくことになりました。ここ数年で『日本の女子プロレスでトップクラス』『世界クラス』と言っていただき、誇らしい気持ちでいっぱいなんですが、それをたくさんの人に見てもらえる場所に行き、別の道で証明したいと思いました」と語った。

「別の道」については明言を避けたが、WWEしかないだろう。実は初めて米国への憧れが芽生えたのはデビュー2年目の18歳の時。当時は目標もなく、すぐにでもプロレスを辞めようと思っていた時期だ。たまたま映像で見た元WWEのスーパースター、レイ・ミステリオJr.の雄姿に心を奪われ「ミステリオみたいになりたい。WWEっていいな」と意識した。その一方で世界最高峰の舞台は「遠い場所」でもあった。

 考えを一変させてくれたのは2015年10月にWWE・NXTでデビューし、現在はロウで活躍するアスカ(36=華名)だ。「真横にいた人があれだけの舞台に立てるのは、自分にもチャンスがあるんだなって教えてくれた。今は遠い世界じゃなくなった」。同じユニットで一緒に活動したことがある“姉”のような存在が道筋を作ってくれたのだ。

 既にマンツーマンの英会話教室にも通い、着々と渡米の準備を整えている。「プレッシャーがないと言ったらウソになるけど、裏切らない活躍をしなきゃという意気込みは死ぬほどあります」。日本にいながら追い続けていたスーパースターの背中は、ハッキリと“天空の逸女”の視界に入ってきた。 

 日本での試合は他団体出場を含め、残り6大会。6月10日新木場大会では、スターダム所属選手を含む参加全選手と各1分1本勝負による最後のシングルマッチが決定。同17日後楽園大会の壮行試合では岩谷麻優(25)との名コンビ「サンダーロック」を約1年7か月ぶりに復活させ、大江戸隊(花月、葉月組)と対戦する。