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平昌五輪開会式で外交デビュー 正恩妹・与正投入の狙い


 平昌五輪が開幕した9日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹・金与正党中央委員会第1副部長が韓国入りし、開会式に出席した。秘密のベールに包まれていた与正氏が“外交特使”としてデビュー。韓国側は国賓級の対応でもてなし、北朝鮮の“政治ショー”が世界に見せつけられた。直系親族初の韓国訪問となった表舞台に“質素美人”の妹を投入した正恩氏の真の狙いは何か? 

 与正氏や金永南最高人民会議常任委員長ら高官代表団を乗せた北朝鮮専用機は9日午後、韓国の仁川国際空港に到着した。金日成主席の直系親族が韓国入りするのは初。しかも、与正氏は正恩氏の妹ながらも詳しい経歴が不明とあって、韓国のみならず海外メディアがその姿を追った。

 空港に降り立った与正氏は、正恩氏を献身的にサポートしている時と変わらぬいでたちだった。小ぶりの黒ファー付きコートに身を包み、スカート、ショートブーツ、ショルダーバッグと黒ずくめの格好。長い髪も髪飾りでまとめただけのシンプルなもので、すっぴんに近い薄いメーク。三池淵管弦楽団を率いた玄松月団長が、濃いメークにゴージャスなファー付きコート、ブランドバッグのいでたちだったのと比べると、与正氏の地味さは否めなかった。

 注目の“初肉声”は空港の貴賓室で拾われた。韓国の趙明均統一相らが北朝鮮代表団を迎え、団長の金永南氏、次いで与正氏の順番に入室。着席を促された金永南氏が、与正氏に主賓席を譲ろうとしたところ「いえいえ、どうぞ」と笑顔で辞退するシーンがあった。

 与正氏の服装や振る舞いについて、北朝鮮事情に詳しい拓殖大学客員研究員で元韓国国防省北朝鮮分析官の高永テツ氏は「金永南が席を譲ろうとしたのは、金正恩の妹で事実上ナンバー2であるから気を使った形です。ただ、公の場ではあくまで金永南がナンバー2ですから、金与正は謙遜した。シックな服装もそうですが、とにかく控えめで真面目な女性という、良いイメージを与えようとしているのでしょう」と指摘する。

 その後、空港から平昌まで高速鉄道で移動する際は物々しい警備態勢が敷かれた。本紙既報通り、暗殺の危険があったため、与正氏には北朝鮮から帯同したとみられる10人以上の屈強な男性SPが囲んだ。韓国側も銃装備、ガスマスクをつけた特殊部隊が北朝鮮代表団一行の後を追い、毒ガスや不審者対策として、催涙弾で鎮圧する態勢をとっていたとみられる。

 破格の待遇の締めは午後8時からの開会式だった。スタジアムの主賓席で与正氏は、韓国・文在寅大統領の真後ろに金永南氏と並んで陣取り、何度もカメラで映し出された。文大統領と横並びだった安倍晋三首相やペンス米副大統領よりも良い席とみられ、韓国側が北朝鮮に対し、いかに配慮しているかをアピールする席割りだった。

 開会式の聖火リレーでは、アイスホッケー女子の南北合同チームの選手が、最終走者の元フィギュアスケートのキム・ヨナ(金妍児)さんに聖火点火を託した。だが、直前まで、韓国や日本メディアの間では「キム・ヨナとともに与正氏がサプライズで聖火ランナーを務めるのではないか」との憶測が飛び交う混乱もあった。

 五輪を舞台にした北朝鮮の“政治ショー”はまだまだ続く。10日には与正氏らは大統領府で文大統領とランチ会談する。正恩氏から預かっているメッセージを伝え、文大統領の平壌訪問を打診するともみられる。

「8日に行われた軍事パレードで金正恩が演説している最中に金与正が、後ろから顔をのぞかせるシーンがあった。普通だったら処分されてもおかしくない粗相ですが、金正恩が妹をアピールするためにわざとやらせたフシがある。今回の訪韓を機に今後、イメージの良い妹を対外的な顔にしていくという狙いがあるのでしょう」(高氏)

 傍若無人な振る舞いを繰り返す正恩氏とは、正反対の与正氏を前面に出す“微笑外交”に韓国は早くも陥落寸前。韓国メディアは与正氏の一挙手一投足を追い「高齢者をきちんと立てながらも口数は多くなく、北朝鮮の女性らしい」などと好意的な報道が目立った。

 米国や日本は毅然とした対応が迫られそうだ。

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