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【新国立競技場建設】立ち退き問題難航 五輪のための転居に反発


五輪前の1961年に建設された霞ヶ丘アパート

 デザイン変更提案や工費高騰で揺れる新国立競技場の建設をめぐり、もう一つの反発も収まらない。旧競技場の敷地近くにある都営霞ヶ丘アパート(東京都新宿区)の立ち退き問題だ。建設計画では、旧競技場に隣接する明治公園が南にずれ、同アパートはなくなる。一部住人はかねて「取り壊さないで!」と都に要望を出しており、22日にも要望書を提出した。政府関係者は「住民らの支援に反五輪の人たちがいる。このまま立ち退かないこともあり得る」と指摘。すんなり建設とはいかない。

 2019年のラグビーW杯と20年の東京五輪・パラリンピックのため、新国立競技場は敷地を拡張して建設。国と東京都が建設費をめぐって対立していることに合わせて、費用高騰の原因となっているデザインの見直しもいまさらながら検討されている。22日、下村博文文科相(61)は「コストダウンを含めて調整できる部分があれば調整したい」とデザイン変更も考えていると明かした。

 だが、問題はそれだけではなかった。

 新競技場の建設にともない、隣接する10棟からなる霞ヶ丘アパートが取り壊しになる。都は建設計画を見越して、12年7月から住人らに転居を勧めてきたが「説明が一方的」と感じた住民らが難色を示している。

 アパートの多くの住民は1964年の東京五輪の前から霞ヶ丘の地に住んでいた。五輪が行われるというので、住んでいたところを立ち退いて、このアパートに入居。つまり、五輪による立ち退きは2回目となる。今年1月の段階で140世帯224人が住んでいるといい、多くが高齢者だ。

 80代の男性住民は「また転居しないといけないなんて…。50年の間に2回も五輪をやらないといけないのか。アパートには高齢者が多く、『もう死ぬしかないわ』と言う人もいた」と嘆く。女性住民は「ごねているとか言われるが、1円だってもらうつもりはない」ときっぱり。

 アパートに約50年住んできた人たちにとって、ここはふるさと。新競技場を造るから出て行けと言われても、受け入れがたいのは当然だろう。一部の住人らは「住民有志」の名で22日、舛添要一都知事(66)宛てに、「住民の声を直接聞いてほしい」「アパートを取り壊さないで」と要望書を提出した。

 しかし、話はここで終わらない。政府関係者は「住民らを支援する組織に『霞ヶ丘アパートを考える会』があります。それはいいのですが、『反五輪の会』という組織も支援しています。立ち退き問題が反五輪とからんでくると、簡単にはいかない」と注意深く見守っている。

 この立ち退き問題は反五輪活動の一環なのか。

「――考える会」の大橋智子氏は「支援する人のなかには『反五輪の会』に籍を置く人もいます。しかし、考える会は反五輪とは別です」と明言する。まったく関係ないという。

 来年1月中が転居のメドになっている。都の都営住宅経営部の担当者は「1月に原宿神宮前や新宿区の若松町アパートに転居できるようになります。霞ヶ丘アパートに住民の方が居残るという想定はしていません。(転居に難色を示す住民も)残るとは言っていないはずです。我々も『霞ヶ丘町会』と話し合ってきていますから」と、あくまで粛々と立ち退き計画を進める意向だ。

 都が話し合ってきたという霞ヶ丘町会とは、アパートの自治会のこと。要望書を出した住民有志と町会の関係はうまくいっていないのが実情だ。

 町会関係者は「要望書と町会は関係ない。町会は都とずっと話してきた。もうすぐ転居でまとまるところに、こういうのは迷惑なんだ。反五輪の会はうちにも来たけど、追い返した。反五輪は好きにやればいいけど、巻き込まないでほしい」とうんざりした様子で語った。

 ふるさとがなくなるというのはとてもデリケートな問題。住民同士でも対応が割れ、そこに反五輪の考えも入ってきて、より複雑になっている。新競技場建設に問題は山積している。

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