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「日本にも007を!」危機管理のプロ・佐々淳行氏が生前本紙に語っていたこと


死去した佐々淳行氏

 旧内閣安全保障室の初代室長を務めた佐々淳行(さっさ・あつゆき)氏が10日午前2時40分、老衰のため都内の病院で死去した。87歳だった。東大卒業後、国家地方警察本部(現警察庁)に入庁した警察キャリア官僚だったが、1972年の連合赤軍あさま山荘事件の指揮を執った“現場派”だった。退官後は危機管理の第一人者として評論、執筆で活躍。本紙にも度々登場し、日本にも諜報組織や007が必要と力説した。

 佐々氏の死去を受け、菅義偉官房長官は「世間の耳目を集めた警備事業で陣頭指揮を執られ、危機管理のプロとして大いに活躍された。危機管理という言葉が多くの国民に知られるようになったのは佐々氏のご功績だった」としのんだ。

 中でも語り継がれるのが1969年の全学共闘会議、新左翼学生による東大安田講堂事件だ。

 佐々氏にとっては母校の象徴的な建物が学生らによって封鎖される事態。大学側から警視庁に出動要請があり、当時警視庁にいた佐々氏も総合警備本部幕僚長として母校に向かい指揮を執り、2日間で封鎖を解除した。著書「東大落城」などでこの時の攻防戦を描き「学生たちにはなるべくケガをさせずに、生け捕りにする方針だった」としている。

 さらに、佐々氏の名前を世間に知らしめたのが72年の連合赤軍あさま山荘事件だった。

 警察庁警備局幹部だった佐々氏は後藤田正晴長官の指示により、警備実施・広報担当幕僚長として現地に派遣された。

 当時、テレビ各局が現場から生中継し、警察側がクレーンにつられた大鉄球を山荘の壁にぶつけて破壊するドラマチックな展開は、視聴者の脳裏に焼きついた。

 9日間かけて人質を救出し解決したが、佐々氏はのちに「“鉄球作戦”は、作戦中にクレーンが故障したため、十分な効果を得られなかった」と回想した。事件は映画「突入せよ! あさま山荘事件」(2002年)をはじめ、ドラマ化もされて、いずれも佐々氏がモデルの指揮官が主要な役柄となった。

 89年に内閣安全保障室長を退官した佐々氏は評論、執筆活動を展開。本紙ではオウム真理教事件などで解説したほか、国際テロ組織アルカイダが世界を震撼させ、イラク戦争も起こった後の2004年4月、「アルカイダの標的ニッポン テロの恐怖と対策」(写真)を連載した。

 佐々氏は連載で小泉純一郎首相(当時)に「日本はイタリアになるか、スペインになるか二者択一。テロで犠牲となった軍隊を国葬にして増派したイタリアか、テロで選挙に負けて政権を明け渡したスペインか。小泉さんは覚悟が必要」と直言したことを明かした。

 ユニークだったのは、日本にも諜報組織やエージェントの活動が必要であると力説した場面だった。

「暴力団やカルト組織などは内部から情報を取らないと対応できない。米CIA、英MI6、ソ連時代のKGB、中国公安部など諸外国がやっているのに日本だけない。警察官、公安調査庁調査官の中でも情報大好きな者や、命がけでやる007のジェームズ・ボンドみたいな情報官を持っていないと、独立国家としてはダメなんです」

 テロが起きたときに警察・自衛隊などの組織がどう動くかが重要だとし「縦割り行政のままではたらい回しが続くだけ」と平和ボケ日本に活を入れた。警察官僚ながら各省庁を縦横無尽に率いたことから「縦社会を横に生きた男」と呼ばれ、前出の元上司・後藤田氏(元官房長官)は「血刀下げて裸馬に乗って単身敵陣に斬り込んでいく奴」と評した。

 葬儀・告別式は16日、東京・南青山の梅窓院で営まれる。

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