24時間働けます! ファミリーマートが導入した新型ロボットがこれまで以上に“未来コンビニ”を感じさせるものだと流通関係者の間でひそかに話題となっている。本紙おなじみの流通ウォッチャー・渡辺広明氏(54)も現地を直接取材すると、「先入観をひっくり返された」と働きぶりに感心するばかり。スーパーロボット「TX SCARA」の全貌をリポートする。【関連記事にも写真あり!】

 今月11日にオープンしたばかりの「ファミリーマートALFALINK相模原店」のリーチイン冷蔵庫は商品を補充する裏側がスケルトン仕様になっている。そこで昼夜を問わずに黙々とドリンクを補充し続けているのがTELEXISTENCE社(以下TX社)の誇る水平多関節型ロボット「TX SCARA」だ。

 カメラで棚の在庫状況を確認し、補充が必要だと判断すると裏側に並べられた在庫を取り出して冷蔵庫へ運ぶ。1本当たり30~50秒と決して速い動作に見えないが、1本ずつしっかりと作業する。「AI学習していて基本的に自律で動きます。万が一、ペットボトルや缶が倒れてしまったり、補充を間違えてしまったりしたときのみ遠隔操作に切り替えて対応します。コンビニは新商品が多いですが、棚割りをタブレットで入れ替えればそれでOKです」(TX社のコックピットオペレーションマネジャーの小林伴之氏)

 客目線ではなかなか気づきにくいが、リーチイン冷蔵庫の補充作業はなかなかの重労働だ。「当たり前ですが寒いので、たいていのお店ではジャンパーを着て作業しています。作業中はファンを停止して冷却も止めますが、集中している間にファンが再び動き始めると音がすごい。こうなると店内でお客様に呼ばれたとしても気づくことができませんから、ワンオペ勤務で冷蔵庫に行くことはほとんどありません」(渡辺氏)

 TX社は当初、幅広い商品の陳列が可能なロボットの開発を目指していたが、あるデータに基づき「TX SCARA」のようなドリンク特化型の開発にシフトしたという。「コンビニ1店舗におよそ3000種の商品があり、形状だけでも200~300種にのぼります。おにぎりやお弁当を陳列するロボットも期待されていますが、実際にコンビニオーナーから話を聞いてみると渡辺さんが指摘したように防犯の観点からもドリンク特化型を望む声が大きかったんです。アルコールを含む飲料は販売数の構成比が高く、既存の店舗でもロボットが動けるレールを設置できる幅さえあれば導入可能です。あとはロボットが作業しやすい傾斜のついた什器に入れ替えるくらいです」(小林氏)

 人手不足が深刻なコンビニで24時間働けるロボットが増えれば、オーナーも店員もより付加価値の高い仕事に集中できることから期待は大きい。
「最初は僕がやったほうが早いと思ったけど、ちょっとした電気代だけで24時間陳列し続けて、2リットルのペットボトルだって並べられるんだから断然こっちでしょ。コンビニでよく売れるモノからロボットの手を借りるというのも正しいし、その意味では次の自動化は販売構成比25%を超えるたばこをどうするか。JTが中心になってセブンが一部店舗で実験していたがなかなかその先が具体的に見えてこない」(渡辺氏)

 これまで一般的なコンビニは、オーナー夫婦(または共同経営者2人)とアルバイト従業員約20人で構成されてきたが、ロボットとの“共働化”が進めばよりサステナブルになるはずだ。