作家・太田和彦氏が提唱する家飲み一番の醍醐味 「自分だけの世界」楽しむための必須アイテムも紹介

2021年12月04日 10時00分

作家の太田和彦氏((C)米谷享)
作家の太田和彦氏((C)米谷享)

 コロナ前だったら忘年会シーズンが始まり、飲む機会が激増する時期でもあるが、まだまだ今年は「控えめに」「おうちで我慢」という人も多いだろう。そこで改めて、身近な存在になった「家飲み」の素晴らしさを再確認したい。居酒屋巡りの著書やテレビ番組で知られる太田和彦氏が、最新作「家飲み大全」(大和書房)にまとめたその魅力を語りつつ、我慢ではない喜びとしての家飲みを提案する。【関連記事で缶ビールの上手な注ぎ方を紹介!】

 ――今月になって徐々に居酒屋に出掛ける人も増えてきました

「常連の店の親父さんや女将さんに会って、『久しぶり』というのを皆さん、楽しんでいるのでしょう。外で飲むのは、知らない他人と飲む面白さであり、世間との絆を持ちたいわけで、そこが2年近く断たれたわけだから、やはり出掛けたくなるよね。私も長年、居酒屋に通い続けた人間だから分かります」

 ――そんな中で「家飲み」に関する著書を出されました

「家で飲むしかない状況が続く中で出版社さんに声をかけてもらい、自分は家飲みで何をやってたんだろう、何の酒なんだろうと考えてみました。そうしたら、外飲みとは全く別の価値があることに気付いたんです」

 ――確かに家飲み派が増えましたが、その魅力に気付けているような気付けていないような…。太田さんのおっしゃる価値とは何なのでしょう
「家で飲むのは自分との絆を確認する時間ですよね。先ほど、外で飲むのは世間との絆だと言ったけど、それとは違う、自分と向き合う時間。でも、これはちょっと気取った言い方かな(笑い)」

 ――醍醐味は

「何もしない(笑い)。これが一番いいですね。テレビも見ないし、本も読まない」

 ――ポケーッと…

「そうそう、自分の部屋で一人、昔のことを思い出したり、俺んちにはいくらお金残ってるだろうと考えてみたり、これがすごくぜいたくな時間だと気付いたわけですよ。お茶飲んでやってもいいんだけど、お酒だと都合もいい」

 ――どうしてですか

「だって、お茶飲んでポケーッとしてたら、家族が不安になるでしょう、『うちの人、大丈夫かしら』って(苦笑)。お酒なら『ああ、飲んでるのか』「余計なこと言わないでおこう』と、放っておいてもらえます」

 ――さすがに本当に何もしないと飽きるのでは

「僕は自分の部屋で飲むんだけど、たまに戦後の流行歌を聴いてるね。あのころの歌にはきちんとした“詞”があるから、酔って高ぶった情緒にビンビン響いてきて、『いい歌だな~』と涙が出てくる。こういった懐かしい曲のように、ノスタルジーに浸れるところも家飲み、一人飲みの良さ。年を取ったからこそだろうけど、やっぱりこれはぜいたくな時間だと思う」

 ――太田流のやり方でお勧めしたいものはありますか

「一日の締めの落ち着いたひとときを持つのはとても大事なこと。だからこそ流儀や作法でワンランク上のものにしたいよね。例えば、僕は仕事を終え、最初に飲むビールが一日の中で一番大切なので、グラスや注ぎ方にはすごくこだわる。注ぎ方は練習です。上手に注ぐと缶ビールでも本当においしく飲めますよ。あとは自分専用のお盆があるといい」

 ――お盆ですか

「自分だけの世界、このお盆の中はほかとは別だよという、テリトリーみたいなものを作ることができるんです。あるとすごく落ち着きます。できれば四角いお盆がいい。丸いのは案外並ばないから」

 ――ツマミはどうしましょう

「今までの家飲み本は、『どうだこんなアイデア(レシピ)があるぞ』という話ばかりだったんだけど、そうじゃなくていいというのを今回は書きました。すごいものは必要なくて、しらす、海苔、かまぼこがあればいい。家飲みの神髄はそこで、じゃこだけでも先ほどの境地に入れる。居酒屋だとそうはいかないでしょう?」
 ――しらす、海苔、かまぼこは調理の必要もない

「火も使わないしね。そもそも、夜に台所をガタガタやりだしても家族に迷惑がかかるでしょう? 一人で酒を飲むという自分勝手なことをしてるわけだから、家族への配慮は大事だと思うんですよ。人によって状況は違うでしょうが、自分の部屋で一人静かに飲むのが一番で、あともうひとつ、コツとしては遅く始めることだね」

 ――飲み始める時間ですか

「私の場合は10時(22時)。早いと家族と同じ時間になってしまうし、みんなが忙しい中で飲むより、夕食とは別に飲む時間を設けるのを勧めるね。10時ぐらいからだと、眠くなっちゃうから(笑い)、深酒にならない。7時から始めて9時に終わると、眠れないし、やることもなくなるからまた飲み始めちゃう人もいるでしょう? 各ご家庭で事情もあるだろうけど、遅くスタートするっていうのはお勧めですよ」

 ――今後、再び感染が拡大した時のために自分なりの方法を確立しておくのも良さそうです

「居酒屋が『公』『世間』なら、家飲みは『私』『自分』。年齢を重ねた人こそ、上手に使い分けられればいいよね。どちらも楽しみましょう」いいよね。どちらも楽しみましょう」 

 ☆おおた・かずひこ 1946年生まれ。デザイナー、作家。デザイン関連の受賞多数。本業のかたわら、日本各地の居酒屋を訪ね、テレビ番組のナビゲーターとしても活躍している。初の著書は90年の「居酒屋大全」。今回の「家飲み大全」というタイトルはそれと対を成す意味で付けられた。

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