みなさんは「馬車」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか? 貴族の乗り物とか、特別な日にしか乗れないようなイメージがあるのでは、と思います。ですが、ここに鉄道を付けると一気に庶民の乗り物になります。それが「馬車鉄道」です。

 実は昔、日本各地で馬車鉄道が走っていました。名前の通り、馬が客車を引くものです。お初は明治15年(1882年)に開業した東京馬車鉄道で、新橋~日本橋間を走っていました。運賃も安くて、現代の路面電車のように気軽に乗れるものだったそうです。

 時代の流れでどんどん廃止になりましたが、今でも観光用に乗れる場所があります。乗り心地を知りたくて、北海道にある「北海道開拓の村」へ行ってきました!

 この施設は、明治から昭和初期の北海道各地の建造物を復元や再現した野外博物館です。入り口は明治41年に建てられた札幌停車場(現在の札幌駅)を再現したもので、鉄ヲタの私はテンションが上がって写真撮影に没頭してしまい、入るまで30分もかかってしまいました(笑い)。

〝入村〟すると、メインストリートにまっすぐ伸びた約600メートルの線路がありました。遠くから真っ白な馬が客車を引いて、こちらに近づいてきます。両脇にアカシアの木が並んでいて、映画のワンシーンみたい!

 さっそく片道250円の乗車券を購入して乗り込みました。客車は小さいですが、重量表記に2トンとあります。つり革や天窓もあって立派な造りです。冷暖房はないので、乗客が窓を開けて調節するようです。

 出発時刻になり、「馬より数倍大きい客車だけど大丈夫かな?」と思った瞬間、馬は力を入れることもなくス~ッと歩きだしました。しかも想像よりも速度が速いんです。馬1頭の力ってすごいですね。乗り心地もスムーズで悪くありません。これは楽しい! 全国にあった馬車鉄道が、なくなってしまったことが惜しく思えるほどです。ぜひみなさんにも体験してもらいたい、そんな乗り鉄でした。

 ここで木村ポイント! 冬は雪で線路が覆われるため、馬そりに変わります。クリスマスシーズンはサンタの衣装で運転士が乗るため、とっても絵になりますよ。それでは、日本唯一の馬車鉄道へ出発進行~!

 ☆きむら・ゆうこ 1982年8月17日生まれ。愛知県出身。鉄道をこよなく愛する鉄旅タレント。2015年にはJR、私鉄、地下鉄、ケーブルカー、モノレールなど、日本全国にある鉄道を全線乗車する「日本国内鉄道全線完乗」を達成。乗車した走行距離は約2万8000キロメートル。