【鉄旅タレント木村裕子の日本全国おもしろ鉄道】車内販売のルーツは「座布団」だった!

2020年10月13日 16時00分

寝台列車乗車の特権。JR柄の浴衣です

 10月14日は、鉄道の日です! これは明治5年(1872年)のこの日に、日本で初めての鉄道が新橋~横浜間を走ったことから定められました。そのため、日本の鉄道は今年で148歳になります。長寿ですね!

 開業初期の資料を見ていたら、今では考えられない面白いものがありました。

 開業わずか3か月後、新橋駅構内に西洋料理と洋酒を提供する食堂が誕生しました。その2年後の明治8年には、この食堂を経営する会社が、「貸座布団屋」を始めます。文字通り、列車内で座布団を貸すサービスです。今では想像もつきませんが、当時の列車の座席は木製で、もちろんクッションなんてありません。列車も線路も不安定で、乗り心地も良くなかったようです。

 そこで誕生したのが、この座布団屋さん! なんとも飛び抜けた発想ですが、当時は儲かる商売だったようです。記録によると、1枚8厘でレンタルしていたとのこと。現在の価値に換算すると、このころの1円は2万円くらいといわれているので、1回のレンタル料は160円ほどになります。

 そしてもうひとつ、「貸枕屋」なんてのもありました。大正時代に入ると、昼夜かけて走る長距離列車で移動する人が増えます。もちろんこの座席も木製です。リクライニングしない、直角の背もたれで何時間も移動するなんて、考えただけで背中が痛くなってきますよね。

 そこで考案されたのが、背中を包むモケットとひじ掛け、それと頭を支える支柱が付いた着脱式の器具です。現在のチャイルドシートみたいに、体を包むように座席に固定できるもので、こちらは30銭でレンタルできました。

 ここで木村ポイント! 私がよく乗っていた平成時代の寝台列車には、料金の一番安い2段ベッドのB寝台でも、枕とシーツ、毛布に浴衣も備え付けてありました。あの時は、ペラペラの毛布と硬い枕にちょっと不満がありましたが、明治時代と比べたらとってもぜいたくなことだったんですね。

 ちなみに昔、貸座布団屋だった会社は現在、JR西日本の新幹線の中で車内販売業を経営しています。コーヒーやお弁当を売る車内販売のルーツが、座布団だったとは驚きですね。それでは、今の鉄道の当たり前に感謝して、出発進行~!

 ☆きむら・ゆうこ 1982年8月17日生まれ。愛知県出身。鉄道をこよなく愛する鉄旅タレント。2015年にはJR、私鉄、地下鉄、ケーブルカー、モノレールなど、日本全国にある鉄道を全線乗車する「日本国内鉄道全線完乗」を達成。乗車した走行距離は約2万8000キロメートル。