今年は観測史上最も早く桜が開花しましたね! ですが新型コロナウイルス感染拡大の影響で、お花見の自粛要請が相次ぎ、さびしい春のスタートになってしまいました。そこで今回は、“文字のお花見気分”を味わっていただけたらと思います。日本は桜と縁が深い国ですが、鉄道と桜も、とっても濃い関係があるんですよ。

「のぞみ」や「ひかり」など、列車にはいろんな愛称が付いていますが、日本で初めて付いた愛称は「櫻」なんです。これは1923年から東京~下関間を走っていた特急列車で、29年に「櫻」という名前が付きました。公募で上位だったことと、日本を象徴する花であったことから採用されたんです。

 この列車は戦時中に列車運用の事情で廃止されましたが、戦後しばらくしてから、臨時便として東京~大阪を走る列車が「特別急行さくら」と名付けられ、平仮名になって復活します。さらに59年からは、東京~長崎間を運行する「寝台特急さくら」となり、約50年走り続けました。

 ちなみに「寝台特急さくら」は東海道線で静岡県を通過するので、アニメ「ちびまる子ちゃん」の「『夜行列車に乗る前に』の巻」で、長崎へ向かう友人をお見送りする、という話で出てきます。その後、時代の流れにより需要が減ってしまい「寝台特急さくら」も廃止されました。

 しかし「さくら」はまたまた復活します。それが現在、山陽・九州新幹線で運行する「新幹線さくら」です。新幹線に付けられたことから、もうこの名前がなくなることはないかな、と思ってます。ちなみに、列車の愛称に「さくら」と付くのはこれだけではありません。千葉県の流鉄流山線にも「さくら」、関西の大手私鉄・近鉄には「さくらライナー」もあるんですよ。

「さくらライナー」は、山桜の名所である奈良県の吉野山の近くを走るため、名付けられました。吉野山や、世界遺産に登録された金峯山寺への観光客を運びます。淡い桜色で、運転台が良く見える展望スペースには桜の形をしたイスが設置された、とってもかわいい電車です。

 ここで木村ポイント! 世間を大きくにぎわせた、あの「桜を見る会問題」が勃発した時のことです。ツイッターでは多くの鉄道ファンが、パロディーで「新幹線さくら」の写真と一緒に「さくらを見る会」とつぶやき、私のタイムラインには“さくら”が咲き乱れていました(笑い)。それでは、一年中見られちゃう列車の「さくら」へ、出発進行~!

☆きむら・ゆうこ=1982年8月17日生まれ。愛知県出身。鉄道をこよなく愛する鉄旅タレント。2015年にはJR、私鉄、地下鉄、ケーブルカー、モノレールなど、日本全国にある鉄道を全線乗車する「日本国内鉄道全線完乗」を達成。乗車した走行距離は約2万8000キロメートル。