【鉄旅タレント木村裕子の日本全国おもしろ鉄道】九死に一生を得た日本一の秘境駅

2019年06月04日 16時00分

小幌駅は、運転士さんが降りるのを止めるほどの難関駅!
 みなさんは列車から降りる時、見知らぬ運転士さんに「本当にこの駅で降りるの?」「降りる駅を間違えてない?」などと、下車するのを止められたことはありますか?おそらく、ないと思いますが…(笑い)。でも私は過去に一度だけあるんです。北海道のJR室蘭本線にある小幌駅での出来事です。
 
 この駅は、鉄道ファンから“日本一の秘境駅”と呼ばれています。秘境駅とは、山奥や広野にポツンと立つ駅のこと。駅周辺には民家もお店もなく、自動販売機すら、めったにありません。
 
 そんな秘境駅の中でも小幌駅が“日本一”と言われる理由は、2つの長いトンネルの間にある約80メートルほどの場所にあるため。周りは山に囲まれていて、南側だけ崖の下に海が面しています。道もないので鉄道か船でしか行けず、世間から完全にシャットアウトされた“陸の孤島駅”なんです。
 
「じゃあ、何のためにあるの?」と思うかもしれませんが、実は駅として営業し始めた1987年当時は、民家やキャンプ場があり、国道へ通じる道もあったんです。でもその後、集落はなくなり道も廃道となり、いつしか鉄道保線員さんか鉄道ファンしか降りない駅となりました。
 
 ただ「日本一降りにくい」と言われると、降りたくなるのが鉄道ファンの性(さが)! でも利用客があまりに少ないため、普通列車すら、その多くは通過してしまうんです。停車するのは1日6本。行きたい人はこの停車する列車で向かうしかありませんが、もし小幌駅で倒れてしまっても救急車が来る道もないので、かなりの覚悟が必要です。
 
 降りたら、ぜひ断崖の下にある海岸へ。道なき道を進むと崖に囲まれた海岸と、洞窟に祭られた観音様を拝めますが、道中の山道にはマムシが出るので要注意! そんな駅だから、小さな手提げバッグ1つ持って女1人で降りようとした私を、運転士さんは優しく止めてくれたのでした。
 
 ここで木村ポイント! この駅は“危篤状態”から蘇生した過去があります。2015年に廃止が検討されたんですが、そのニュースが流れると全国から鉄道ファンが訪れました。小幌駅のある豊浦町はこれを見て、観光資源として残すことを提案したんです。存続の費用を集め、今後は1年ごとに更新を検討すると発表。すると鉄道ファン以外の人も降りるようになり、いまでは秘境駅ツアーが開催されるほどの有名駅となりました。
 
 それでは九死に一生を得た小幌駅へ、大自然サバイバルに出発進行!
 
 (毎週火曜掲載)
 
☆きむら・ゆうこ=1982年8月17日生まれ。愛知県出身。鉄道をこよなく愛する鉄旅タレント。2015年にはJR、私鉄、地下鉄、ケーブルカー、モノレールなど、日本全国にある鉄道を全線乗車する「日本国内鉄道全線完乗」を達成。乗車した走行距離は約2万8000キロメートル。