利用者の減少などにより廃線になる路線は少なくありません。廃線となる路線の運行最終日は、通称“葬式鉄”と呼ばれる鉄道ファンが全国から押し寄せます。それまでガラガラだった車内やホームの風景を見ていた地元の方は「なぜこんなに人が!?」と驚がくするのですが、そんな様子を見た観光協会の方が動きだしました。
 
 昨年3月に廃線となった、島根県のJR三江線石見川本駅での出来事です。人員整理のお手伝いに来た川本町観光協会の大久保さんは「“日本一利用者が少ない鉄道”と言われ、1日20人ほどしかお客さんがいなかった駅に、この日は1000人以上も来てもらえた。“人ではなく空気を輸送している”とまで言われていたのに、最終列車には300人以上が乗ってくれた!」と驚いたそうです。
 
 その後しばらくして、JRから駅舎と線路800メートルを無償譲渡する提案を受けました。廃線した路線の駅舎や線路は撤去費用がかかるため、観光協会などに譲渡を持ち掛けることがあるんです。そこで大久保さんは「石見川本駅の存在を鉄道ファンは知っているので、発信すればきっと全国からまた来てくれる!」と、有志を集めて観光地化を目指し始めました。
 
 運行最終日、駅で鉄道グッズの店を出店をしていた鉄道業界に詳しい方も加わり、鉄道の中古車両を取り扱っている業者から保線作業員用に使われていたレールバイク(線路を走る原付きのようなもの)を1台購入。町内のお祭りの日に1回500円で走らせたところ、長蛇の列となり、その売り上げで2台目も購入。次の開催時は待ち時間をなくすため事前予約制にしたところ、250人の枠が見事に完売しました。
 
 石見川本駅へ行く交通機関はバスしかありません。しかも広島駅から2時間、日本海側の山陰本線大田市駅からでも1時間かかります。それなのにわざわざ足を運んでくれる鉄道ファンに、毎回驚かされているそうです。
 
 ここで木村ポイント! 今後の目標はレールバイク体験で資金をため、本物の列車を中古で購入し、誰でも運転士となって実際に走らせることができる運転体験をすることだそうです。おおよそ、あと1万人ほどが乗車すれば実現できるとのこと。次回は7月開催予定です。それでは夢の応援も兼ねて、石見川本駅へ出発進行!
 
 (毎週火曜掲載)
 
☆きむら・ゆうこ=1982年8月17日生まれ。愛知県出身。鉄道をこよなく愛する鉄旅タレント。2015年にはJR、私鉄、地下鉄、ケーブルカー、モノレールなど、日本全国にある鉄道を全線乗車する「日本国内鉄道全線完乗」を達成。乗車した走行距離は約2万8000キロメートル。