【週刊Mリーグ】「動の寿人」と「静の滝沢」 土田浩翔が語るライバル二人の共通点

2021年06月16日 16時00分

【写真1】寿人プロの三倍満はリーチしたからこそ【写真2】中待ちではリーチせず、7筒を引き入れた滝沢プロ

【〝レジェンド雀士〟土田浩翔が選ぶMリーグこの一打・麻雀は人なり】麻雀プロリーグ「Mリーグ」創設当初から解説者として対局を間近で見てきた土田浩翔プロが独自の視点で戦いを振り返る。今回のテーマは「ライバル」だ。Mリーグ2020では個人MVPを獲得し、21年現在、日本プロ麻雀連盟の最高峰タイトルである鳳凰位に君臨するKONAMI麻雀格闘倶楽部・佐々木寿人プロ(44)。EX風林火山の初優勝メンバーであり、チームの危機をセミファイナル(準決勝)同日2連勝で救った滝沢和典プロ(41)…2人の魅力を深掘りします。

【リーチをかけてツモる!】卓上には打ち手の心のありようが、所作をはじめ手牌や河にも表れます。手牌はまさに選手たちの心を映し出す鏡です。寿人プロを象徴する一打は、レギュラーシーズン中にMリーグ最高スコア9万4000点を記録した試合でツモったリーチ・ツモ・リンシャンカイホー・ダブ東・ドラ4・裏ドラ3・赤で13翻の三倍満となったアガリです。

 ヤミテンに構えても、出アガリ跳満1万8000点のところ、当たり前のようにリーチを即決したさまには「リーチをかけてツモる」という寿人プロの信条がにじみ出ています(写真①)。

 リーチした時点では、寿人プロはツモって親の倍満8000オールになること以外、余計なことを一切考えていません。出アガリを期待しないのが寿人プロのフォームであり、それを実現することでファンが喜ぶということも知っています。

 裏ドラが3枚乗って三倍満になったのは望外だったとは思いますが、暗カンからのリンシャンカイホーは、リーチをしたからこそ得られる究極の理想です。

 この手牌を“理”で考えたらリーチはしません。ドラ東の暗カンすらしない人もいるはずです。寿人プロは普段からリズムで打っているので、体がリーチと反応したからリーチしただけです。だから偶然ではなく、必然の三倍満なのです。

 麻雀が“伝承芸能”だとしたら、寿人プロは日本プロ麻雀連盟の先輩たちが戦ってきた強者たちの話を少年のような気持ちで聞いてきたはずです。目で見て覚えて、一緒に打って肌で感じてきた中で、答えは教えてもらうのではなく、自分で感じ取るものだと行き着き、感じたものを体に染み込ませながら今に至っています。だから自分はまだまだなんだという謙虚な気持ちでいつも卓上にいるはずです。世の中には強者はいくらでもいると認め、受け止めているからこそ、理ではなく感性で打てるのです。

【品格を備えた最高峰の打ち手】滝沢プロの美学を改めて感じた一打は、自身ファイナル2連勝を決めた試合の中にありました。

 この手牌(写真②)、河にすでに2枚切られているドラ中待ちでリーチする人もいるでしょう。しかし滝沢プロは、自分の美学に見合わない最終形ではリーチにいきません。

 だからいったんドラ中待ちに構えておいて、ツモってきたらアガるでしょうが、ヤミテンに構えたということは、2筒か4筒か7筒か、もしくは索子の一気通貫への手変わりを見据えています。7筒を引き入れたことで、2・4・5・7・8筒という美しい多面待ちになったところで、ドラ中を宣言牌としたリーチは、まさに滝沢和典という品格ある打ち手を象徴した一打です。

 なおかつリーチをかけるときの所作、ツモったときの所作、フリ込んだときの所作。どの姿勢も振る舞いも、美しさを伴うことがファンをひきつけます。常にロンと言われるかもしれないという謙虚な気持ちで牌を切っているので、危険牌だろうがドラだろうが、恐れながら切ることが一切なく、いつも通りの奇麗な所作ですっと切ります。

 当たることもあれば通ることもある、何が起きても不思議じゃないという麻雀の真理を見抜いているので、対局相手に対しても、すべてを受け入れられる構えで打てているのです。そういった姿は勝利よりも尊いもので、結果的に万人から愛されます。アマチュアはもちろんプロも見習うべき、まさにお手本にしてほしい打ち手です。

 滝沢プロは“美”を求め、寿人プロは“リズム”を重視しています。2人とも麻雀は人知を超えているものだとわかっているから、その瞬間で判断するしかないし、逆らう必要もないと思っています。

 共通点は頭で考えたっていい答えは出ないので、長考することに意味はなく、いかに無駄なことであるかを知り尽くしていること。麻雀において無駄を極力省こうとしているからこそ、それは手牌にも所作にも表れ、見る者にとってはシンプルで美しく、強く見えるのです。

 寿人プロが「動」なら滝沢プロは「静」。2人が日本プロ麻雀連盟で出会った運は、ON伝説を生み出した王貞治さんと長嶋茂雄さんの関係のように、やはり天性の運がもたらしたものだと思います。

 ☆つちだ・こうしょう 1959年、大阪府生まれ。血液型=B。最高位戦日本プロ麻雀協会特別顧問。Mリーグをはじめ「THEわれめDEポン」等、メディア対局にも数多く出演。札幌、東京、埼玉、大阪、広島、福岡で麻雀教室を開講中。著書は「『運』を育てる 麻雀界の異端児 土田浩翔の流儀」(KADOKAWA)ほか多数。

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