【特別企画・トップMリーガーインタビュー】精神状態が勝敗を左右する麻雀。常に冷静なプロは何を考えているのか。オフシーズンの特別インタビュー企画、プロ麻雀リーグ「Mリーグ」2019シーズンを制した「U―NEXT Pirates」の“船長”小林剛に聞いてみた。

 ――麻雀はメンタルが大事だと言われます。小林選手は強いですよね

 小林 強いと言われるんですけど、無神経なだけというか、何も考えてないだけというか。普段もそんな感じですね。交通事故に遭っても、ツイてなかったで済ましますね。悪い偶然が起こったというだけで、そんなに気にしない。「なんで俺ばっかり!」とかはならないですね。別に鍛えたものではなく。麻雀で鍛えられていっそう動じなくなったかもしれないですね。

 ――そこでついた異名がロボとかサイボーグです。これをどう捉えていますか

 小林 無感動、無関心なところを捉えて言われているんで、まあいいんじゃないですかね。作ってる意識はないんですね。

 ――感情を前面に出している姿が想像できません

 小林 あんまりないですね。それは子供のころから「小林君、感情少ないよね」って。中学生の時に言われた記憶はあります。

 ――怒ることはあるのですか

 小林 怒ったりもしますよ。

 ――ふざけんな!とか声を荒らげたりもするのですか

 小林 そうなる人ってあんまりいないんじゃないですか(苦笑)。ほとんどないですね。

 ――ちなみに最後に怒ったのはいつか覚えていますか

 小林 昨日(注・インタビューは7月末)、朝倉(康心)と話していて、「あそこであのしゃべりはダメだ。しゃべってる人に失礼だからダメだ。あそこは黙っているところだ」というような話はしました。

 ――やはり麻雀は心が揺らぐと、打牌にもブレが出るのでしょうか

 小林 でしょうね。ボクにはあんまりないんですけど。麻雀っていろんなことが起こるゲームなので、いちいち気にしちゃいけないんですよ。麻雀プロってそういうゲームの専門家なので。「裏3だった、もうやってらんねえ」とか「3メンチャンがカンチャンに負けた、今日はダメだ」と言ってちゃダメなんですね。そういうのは当たり前のこととして処理しなければいけないし。「天和をツモられた、もうダメだ。やってられない」じゃないじゃないですか。天和をツモられたら、この点差ができた、さあ何しようかなと考える。麻雀はだいたい不都合なことしか起こらない。アガれるのは4回に1回より少ないし、そのアガリも完璧なアガリってごくわずかで、渋々安くアガっときましたみたいなのが多いじゃないですか。本当に思い通りにならないゲームなので、偶然の悪い結果を気にしてもしようがないんじゃないですか。

 ――とはいってもMリーグの舞台はプレッシャーも強いため、普段はしないようなミスも出ています

 小林 そうですね。清一色を見逃しちゃう事件もありましたし。なんで分からないんだと言われても、分かってるんですね。ちょっと考えたら分かることを、やっぱり緊張感がありすぎるとミスは増えると思ってるんで。個人差はあるけど、それはどの選手も全員そうだと思ってるんで。普段トレーニングしていて、大きな舞台にも慣れてるはずなんですけど、やっぱりミスはしちゃうんですよ。あの清一色は誰でも分かる。瑞原(明奈)さんも、流してしばらくしてから頭の中で組み立てて気付いたというぐらいなので、見なくても数字を言われるだけで分かるような形なんです。ただそういうミスが起こっちゃうんですね。多牌とか少牌とかいろいろ起こりましたけど、普段あんなに起こらないんですよ。すっごい麻雀慣れてる選手が集まっているので、あんなミスは普段は起こらないんですね。

 ――注目度が高いゆえに、ミスをすると目立ってしまいますね

 小林 メンチン見逃し、倍満見逃しとか大きなものは話題になりますけど、小さなものはみんなやってるんで、そんなにボクは気にすることではないと思ってます。瑞原にもこんなのはみんなやってるからと普通のこととして処理してほしかったですね。

 ――小林選手もミスすることはあるのですか

 小林 いっぱいありますよ。「あっ、隣切っちゃった」とか「字牌の切り順間違えた」とか。細かいミスは多い方ですね。「なんでこれ切ったの?」は結構言われて、その通りです、みたいな。主に小さな字牌の切り順とかですね。あとはちょっと降りすぎたかな、押しすぎたかな、とかいっぱいありますよ。

 ――そういう時は「やってしまったー。今日はダメだ」と落ち込んだりしますか

 小林 ならないですね。間違えた、あっ本当だ、こっちが良かったね、で済む問題ですね。

 ☆こばやし・ごう 1976年2月12日、東京都生まれ。麻将連合プロ。第1、2期天鳳名人位。第3、7、9期将王。第3回野口賞。RTDリーグ2018優勝。MリーグではU―NEXT Piratesにドラフト1巡目で指名され、2019シーズンで優勝。ツキや流れなどの曖昧な理論を嫌う“麻雀サイボーグ”として、その実力を認められているトッププロ。