コンビニから見る「家飲み」最前線 流通ウォッチャー・渡辺広明氏が分析

2021年05月30日 10時00分

【写真上】ローソンPBの「ゴールドマスター」も好評【写真下】(左から)ファミマのおつまみはワンハンド系が好調、限定発売の「-196℃ブラックパンチ」がリニューアルで度数が8%から7%に
【写真上】ローソンPBの「ゴールドマスター」も好評【写真下】(左から)ファミマのおつまみはワンハンド系が好調、限定発売の「-196℃ブラックパンチ」がリニューアルで度数が8%から7%に

 お酒ばかりを悪者にするな! 緊急事態宣言やまん防が発令されている区域では飲食店の酒類提供の自粛が求められ“出口の見えないトンネル”に飲食店の悲鳴が上がっている。一方、昨年“どん底”を経験したコンビニではお酒の販売をきっかけに少しずつ売り上げを取り戻しつつある。流通ウォッチャーの渡辺広明氏(54)と家飲み最前線を取材した。

 日本フランチャイズチェーン協会が20日発表した4月の全国コンビニエンスストア売上高は、既存店ベースで前年同月比6・6%増の8425億円で2か月連続のプラス。最初の緊急事態宣言で人出が激減した昨年4月に比べれば売り上げも客数も回復したが、コロナ禍前の水準には戻っていない。

「今苦しんでいる飲食店には申し訳ないですが、家飲みあるいは外飲みニーズがあって本当に助かったなというのが正直な気持ちですよ。お酒の取り扱いがなかったら(売り上げが)ここまで回復しなかったでしょうから…」

 複雑な胸中を明かすのは都内のオフィス街立地に複数店を持つコンビニオーナー。3回目の緊急事態宣言が発令された今年4月25日以降は特にお酒の売れ方に変化があったという。

「それまでは20時まで飲食店で飲んできた方がもうちょっと飲みたいという感じで1~2缶買っていかれましたが、今はあまり時間も関係なくカゴでお酒とおつまみなど複数買っていくお客様が増えています。試しに入れてみた『モエ・エ・シャンドン モエアンペリアル』(税込み5995円)も月に1本以上売れてて驚きました」

 コンビニに5000円超のお酒が並ぶことも意外だが、渡辺氏は「同じ商品が並びがちなコンビニでも、お酒は差別化が図れるカテゴリーだ」と説明する。どういうこと?

「もともと酒屋さんからコンビニになった人が多く、お酒に対するこだわりが強いので標準的な売り場サイズに対して(本部で)数多くの商品が推奨され取扱数が圧倒的に多いカテゴリーなんです。そこからオーナーが自分の店に合ったお酒を選ぶのでカップ麺売り場などに比べると多様性がある。中にはオーナー自ら個性的なビールやお酒を仕入れているケースもありますね。つまりコンビニでもっとも個性が出る売り場なんです!」

 セブン―イレブンはニューノーマルを意識して昨秋から酒売り場を拡大し関連販売を意識した新レイアウトの導入店舗を増やしている。

 ファミリーマートの広報担当者は「巣ごもり需要で好調のレモンサワーに加えて、もう1~2本とレモン以外の味を求める方が増えている。あと家飲み需要で好調な常温リキュールの炭酸割り商品も売れていますね」と話す。いわゆるストロング系チューハイよりもアルコール度数4~7%の商品が伸長しているのは、見逃せない変容と言えるだろう。

 おつまみの充実に注力しているのがローソン。「冷凍食品のおつまみを含む総菜カテゴリーは前年比で約5割増えていますし、日配食品も前年比110%前後で非常に好調です。コンビニでお酒やおつまみを購入され宅飲みする流れは今後も加速していくと考えています」(広報担当者)

 また、先週21日に東京・八重洲地下街にオープンしたドン・キホーテの新業態「お酒ドンキ」も話題を呼んでいる。ドンキならではの七色に光る店頭棚でイチオシされていたのは「コカレロ」(コカの葉を使用したリキュール)、「クライナー」(ドイツ発のかわいい小瓶に入った酒)、「マバム」(ボトルを振るとキラキラとラメが光るスパークリングワイン)といったパリピ酒だ。

「僕はあまりお酒に詳しくないけど、『こんなのあるんだ!』と発見する楽しさがありました。若い女子に人気の『チャミスル』や『ほろよい』の6缶パックをまとめ買いしやすいように置いているのは商売上手。高級なお酒が入ったショーケースも面白く、東京駅を利用する観光客の目を思わず引くと思う」(渡辺氏)

 八重洲地下街が誕生した1965年から店を構える老舗酒店「リカーズハセガワ」の北口店で働く大谷嶺奈さんも驚きを隠さない。

「徒歩30秒のところに同じ酒屋ができて正直『どうするの!?』と思ったけど、北口店はワイン、本店はウイスキーと専門的な品揃えの部分でドンキさんより強みがあります。楽しくお酒が買える八重洲地下街として盛り上がってほしいですね」

 同店は“お酒のガソリンスタンド”を目指しているそうで、新幹線の中で楽しめるような個性あふれるクラフトビールやスクリューキャップのワインも数多く取り揃えている。ゆるいツイッターも面白い。

 ☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約730品の商品開発にも携わる。著書に「コンビニが日本から消えたなら」(KKベストセラーズ)。

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