【凱旋門賞】フィエールマン&ブラストワンピース なぜ異例の英国で調整

2019年10月01日 21時33分

ブラストワンピースとフィエールマンが調整場所に選んだニューマーケット

 世界最高峰の仏GI第98回凱旋門賞(10月6日=パリロンシャン競馬場・芝2400メートル)がいよいよ6日後に迫った。今年は日本からキセキ、フィエールマン、ブラストワンピースの3頭が参戦予定だが、注目は決戦の地・フランスではなく、海を隔てた英国のニューマーケットを最終調整の地に選んだ2頭の関東馬だろう。史上初の凱旋門賞3連覇を狙う女帝エネイブル打倒の可能性の前に、現在までの〝常識〟と今回の戦略の本質に迫ってみたい。

 日本のホースマンにとって凱旋門賞は“悲願”と言えるほどのビッグターゲットだが、海外遠征自体は珍しいものでなくなり、勝利という結果を得て凱旋してきた馬も相当数いる。しかし、それでも「正しい遠征スタイル」は確立しておらず、最も正解に近かったとされている1999年エルコンドルパサー(フランスで2→1→1着後の凱旋門賞で2着)のような長期滞在を選択する馬はほとんどない。現地で1戦もしくは前哨戦を使わない“ぶっつけ”の挑戦が現在のスタンダードだ。

 今年の6月から英国のニューマーケットで調整を開始。英国遠征では2戦目、ドバイ遠征から数えて4戦目の挑戦で初の海外GI(ナッソーS)を手にしたディアドラ(牝5・橋田)は、近年は見かけなかった長期滞在組。この結果を受けて「現地での長期滞在こそが正解」のような論調が湧き起こったが、当の橋田調教師はこう話す。

「英国の競馬場は日本のそれとは全く違うものであり、その場所に対応するために長期滞在が必要と考えた。実際、英国の調教場で時間をかけ、調教メニューに変化を加えながら調整したことで馬体も変化していったからね。短期間の参戦では今回の結果は得られなかったと思います」

 成果を口にする一方で「例えば、香港やドバイのようなコース形態が日本とさほど変わらない場所へ遠征するのであれば、慣れている日本で調整したほうがいいだろうし、それがヨーロッパの国であったとしてもフランスは英国のような起伏の激しいコースではない。フランスに挑戦するのであれば、長期の滞在でなくてもいいと考えています」と短期での遠征にも肯定的な意見。つまりは“狙うべき場所”によって柔軟な思考を持つべきということだろうか。

 今年の日本馬も短期滞在での挑戦。8月中旬に渡欧し、前哨戦のフォワ賞(3着)から本番へ向かうキセキは、過去に例の多いフランスのシャンティイを拠点としての参戦だが、札幌記念を前哨戦として位置付けたフィエールマン、ブラストワンピースの関東馬2頭は競馬の開催されるフランスでなく、長距離輸送が必要になる英国のニューマーケットを滞在地に選択した。過去の日本馬でフランス以外に滞在して凱旋門賞に挑戦した馬はいない。

「なぜ、シャンティイではなくニューマーケットに?」

 これが今回の、そして今後へとつながるキークエスチョン。今夏、英国に遠征(2戦して6→8着)したシュヴァルグランのため、友道厩舎の大江助手はニューマーケットに滞在した。彼は2016年の凱旋門賞に挑戦したマカヒキの担当者でもある。2つの調教場で大一番へ挑んだ同助手ならニューマーケットとシャンティイの“違い”がわかる?

「ニューマーケット、シャンティイのどちらを使ったとしても落ち着きが出る、馬体のイメージが変わるといった類いの変化は出ましたが、それは一方だけが大きく変わるというものではありません。僕個人の意見としてはコースバリエーションの多いシャンティイのほうが様々な調教メニューが組める気がしましたし、なによりもシャンティイの滞在なら長距離輸送もない。でも、それをすべて承知のうえでノーザンファーム(2頭の生産者)はニューマーケットでの調整を選択。とても興味深いと思います」

 今回のキセキのように、同厩のヴィクトワールピサ(10年7着)はフランスで前哨戦を走り、シャンティイで調整をした。だが、彼にもニューマーケット滞在の、さらに言えば今回のキセキにもニューマーケットでの滞在案がわずかながらあった。当時の遠征に滞在した松田助手は「でも、それは前哨戦の場所(英国、愛国か、それとも仏国か)だけの問題と思いますよ。僕自身はエアシャカールの遠征(00年キングジョージVI世&クイーンエリザベスDS=5着)でニューマーケットにも行ってますけど、シャンティイとの違いはほとんど感じていないし、むしろシャンティイのほうが馬場が重くて力がつくような印象を持った」。

 英国での前哨戦にも出走せず、海を越えての輸送というハンデを背負ってまでニューマーケット滞在を選択した理由は何なのか? 本紙では明日以降の「凱旋門賞特集」でその部分について明らかにしていきたい。

【ネット&UMACAで発売】凱旋門賞の馬券発売はインターネット投票(即PAT、A―PAT会員)およびUMACA投票で行われる。インターネット投票は6日午前7時から発走予定時刻の2分前まで。レースの模様はグリーンチャンネルが同21・00~24・00に(一部無料)、フジテレビ系列26局ネットは同21・00~24・34に、ラジオNIKKEI第1は同22・30~23・30に放送予定。馬券発売、中継等の詳細はJRAホームページ参照を。