【天皇賞・秋】モーリス圧勝 距離の壁を崩した「完璧仕上げ」と「名手ムーアの自信」

2016年10月31日 21時32分

ムーアの右ムチに応えてグングンと加速したモーリス(左から2頭目)

 30日、東京競馬場で行われた「第154回天皇賞・秋」(芝2000メートル)は、1番人気で昨年の年度代表馬モーリス(牡5・堀)がライバルをねじ伏せる圧倒的なパフォーマンスで勝利。今シーズン限りでの引退が決まっているが、これでマイルGI・4勝に加えて秋盾を手中に収め、国内ラストランを飾った。未知の領域を切り開いて進化を続けるモーリスと世界の名手ライアン・ムーア。検量室からその強さを改めて検証する。

 年度代表馬は裏切らない——安田記念から続いたまさかの悪夢(連続2着)を凱旋門賞ジョッキーが一掃した。11か月ぶりに日本で再結成されたモーリス&ムーアの“最強コンビ”に左回りも距離も問題ではなかった。

「堀調教師が完璧な仕上がりで用意してくれた。1コーナーで位置取りに慌てたくらいで直線は早い仕掛けだったが、誰も追いつけない自信があった」(ムーア)

 道中は中団の外に構え、逃げるエイシンヒカリを中心として先行勢を射程圏に入れる。残り200メートルで先頭に立つと膨れるように外に切れ込んだが、後続に詰め寄られることなく見事に修正。中距離最高峰の舞台で主役を演じ切った。

 堀調教師は「スタートが決まって、道中のポジションはレース前に相談した通り。ただ、直線は仕掛けが早いな、と見ていた」。2000メートルに挑戦した札幌記念は2着に敗れ、しかも今回もマークされる立場。その重圧を無視するかのごとく、ムーアは勝利に向かって走らせた。「返し馬で感覚をつかみ、意思疎通した結果でしょう。彼の技術と情報収集力は素晴らしい」と同師は脱帽した。

 1週前の追い切り後は反応の鈍さと重さがあったモーリスだが「その後はしっかり調整して、競馬場に輸送した後は少し馬体が減っていた。年齢的なことも考えられるが、馬体は完成の域に入ったのでしょう」と目を細める。そして距離克服に向けた日々の鍛錬と努力をムーアが結果に結びつける。名手と名トレーナーのもとで中距離王に君臨したモーリスは、もはや歴史的名馬の一頭と断じて差し支えないだろう。

 引退レースは予定通り、シャティン競馬場で行われる香港国際競走(12月11日)。戦前は香港カップ(芝2000メートル)を既定路線にしていたが、ノーザンファームの吉田勝己代表は「オブライエン厩舎の出走馬との兼ね合いがあり、カップかマイルかはまだ分からない。ライアンが乗れるようになれば」と出走レース決定を保留した。日本代表に世界のトップジョッキーを配したいのは当然のこと。あとはどちらで有終の美を飾るのか。距離という分厚い壁を破壊した歴史的勝利の余韻として、今は出走レースが決まるのを待ちたい。