サブちゃんの言葉で競馬実況ギネス達成 園田82歳独眼竜アナ64年9万レースで幕

2020年01月08日 16時30分

吉田勝彦氏

 兵庫県園田競馬場での実況放送を64年間行い、2014年には同一競馬場での実況アナウンサー世界最長記録が認められてギネスに登録された吉田勝彦氏(82)が9日をもって引退することになった。42歳で右目を失明しながら吉田節と呼ばれる独特の語りで、多くのファンを魅了した名物アナウンサー。多くの競馬関係者からその引退を惜しむ声が聞かれる中、ギネス達成の裏にはある大物歌手からのひと言があったことを明かした。

 園田競馬場の名物アナウンサー・吉田勝彦氏が偉大なキャリアに終止符を打つ。熱戦を伝えたレース数は9万超。今やJRAのトップジョッキーとして名をはせる岩田康誠をいち早く見いだした慧眼の持ち主でもあった。

「デビュー当時から目をかけてもらい、感謝しかないですね。吉田さんあっての園田ですから。もうアナウンサーの域を超えた存在でしょう」と振り返った岩田康。デビュー当時、見習い騎手らしからぬ手綱の長さを「10年早い」と多くの調教師がたしなめる中、吉田氏は「いや、どのレースでも彼の馬が一番生き生きと走っている」と真っ向から反論。「アナウンサーのあんたに何が分かる!」と返されても、「馬に乗ったことはなくても、誰よりもレースを見ている私の目にはそう映る」と譲らなかった。その後、岩田康はリーディングジョッキーの座へ駆け上がり、JRAへ移籍。その後の活躍は周知の通りで、馬だけでなく、人を見る目の確かさも証明してみせた。

 御年82歳にしてキャリアは約64年。一時は引退も考えたが、ある大物歌手からのひと言で現役に踏みとどまった。それが親交のあった北島三郎からの言葉だった。「吉田ちゃん、俺だって足りないんだ。だから歌っている。やめちゃダメだ」と激励された。この言葉があってギネスを達成することができた。

 また、故藤本義一氏からは我流を恥じる吉田に「我流といえど極めたあなたは一流です。胸を張ってください」と背中を押されて、世界一の称号を手にした。

「どんな気持ちで当日を迎えるのか、マイクの前で何を思うのか、正直よく分からんのや」と偽らざる本音を打ち明けた吉田氏。花舞台は園田9日の6レース。13時15分発走の実況を最後にマイクを置く。