混戦安田を制した福永騎手の名人芸

2012年06月07日 12時00分

 3日、東京競馬場で行われたGⅠ第62回安田記念(芝1600メートル)は、2番人気のストロングリターン(牡6・堀)が追いすがるグランプリボスを退け、悲願のGⅠタイトルを手にした。傑出馬不在の中で行われた王者決定戦。この大混戦の行方を左右した要素は何だったのか?

「完璧なレースができました」。レース後、鞍上の福永が繰り返し使った言葉は〝ノーミス〟だ。

 1番人気馬サダムパテックの単勝オッズが6・6倍。傑出馬不在で、どの馬にもチャンスがある状況…。こんな時にモノをいうのは勝負運とジョッキーの腕。そんな中で昨年、全国リーディングに輝いた若きリーダーが勝利へ導く名人芸を披露した。

 今回最大の〝運〟は④番枠を引き当てたこと。今開催の東京は周知の通り〝内枠天国〟。「コーナーではなるべく外を回らず、直線に入ってから外に出すことを心掛けた」(福永)の証言と、同枠グランプリボスが2着に入った事実がそれを如実に物語る。

 勝利の方程式のもうひとつ〝腕〟は、出遅れがちな同馬を好発進させたこと。「ペースが速くて折り合いがついたし、道中もリラックスして走れた。その分、直線でのモタれ癖も最小限に抑えられた」

 勝負事は出だしが肝心だが、まさに今回のストロングリターンは初めの一歩で勝利を決定付けたわけだ。

 今年も勝ち星を量産(全国リーディング1位)しているとはいえ、福永は大舞台で有力馬に騎乗しながらも結果を残せずにいた。しかしこの日は、万人をうならせる手綱さばきで春を締めくくった。

「それでも今のままではダメ。足りない分を埋めるべく、今夏は米国で騎乗したい」

 レース後、さらなる進化を目指して米国行きを宣言。宝塚記念後に海外遠征を敢行する。

 名実ともに日本を代表する騎手に――。福永の戦いはまだ始まったばかりだ。