菜七子「重賞惜敗」の先 大井・交流GIII東京スプリントで見えた課題と収穫

2019年04月11日 16時30分

菜七子は悔しさいっぱいの中でも冷静にレースを振り返った

 JRA女性騎手初の快挙ならず――。10日、大井競馬場で行われた交流GIII(JpnIII)東京スプリント(ダ1200メートル)で、初のグレードレース制覇が期待された藤田菜七子騎乗のコパノキッキング(セン4・村山)はスタートで痛恨の出遅れ。直線での猛追及ばず、キタサンミカヅキ(牡9・佐藤賢=船橋)の1馬身差2着に惜敗した。果たして歓喜の瞬間は遠のいたのか、それとも近づいたのか。

「初のナイターと雨の影響で、いつもより少しテンションが高かった」(菜七子)

 パドックから頭を上げるなど、うるさいしぐさを見せていたコパノキッキングはスタートで痛恨の出遅れ。鞍上の菜七子はそこでじっとせず、位置を取りに行く競馬を選択した。

 あっという間に中団まで取りつくと、4角で外に持ち出し、自慢の末脚でグングン差を詰める。それでも2番手から終始スムーズなレース運びをした勝ち馬を捕らえ切ることはできなかった。

 レース後の検量室では泥がついた顔をぬぐうこともせず、VTRが流れるモニターを食い入るように見つめ続ける。武豊、的場文から、ねぎらいの言葉をかけられ、ほんの少し笑顔を見せた後もまたモニターに目を…。悔しさがにじみ出ていた。

 最終レース騎乗後の会見で菜七子は「ゲートの態勢は問題なかったけど、スタートで出負けしてしまって…。道中で砂をかぶってヒルんだりもしたけど、直線で外に持ち出してからは、いい脚を見せてくれました。ただ勝ち馬にうまく乗られてしまって…」とレースを振り返った後、「負けてしまい、すごく悔しいですが、もっともっと活躍できる馬だし、期待の大きさは変わりません。こんな素晴らしい馬に乗せてもらい、オーナーや先生など、関係者の方々に感謝しています」と思いを語った。

 管理する村山調教師は次走について、交流GIII(JpnIII)北海道スプリントC(6月6日=門別ダ1200メートル)を選択肢の一つに挙げたが、今後もスプリント戦での出遅れは致命傷になりかねないだけに、スタートの改善は大きな課題となる。

 ただ、これまでは逃げるか、追い込むか、両極端な競馬しかできなかったのが、今回は位置を取りに行き、馬群の中でもレースができたのは敗戦の中での大きな収穫だ。

 初の重賞制覇はお預けとなったが、確実にまた一歩前進なった敗戦とも言えようか。この経験をバネに菜七子の挑戦はこれからも続いていく。

【売得金額は前年比160・7%】第30回東京スプリントの売得金額は前年比160・7%となる11億8421万3300円でレコードを大幅に更新。また競走当日の売得金額も前年比139・5%の27億5693万9700円で、こちらも売り上げレコードを更新。菜七子効果は数字にもハッキリと表れた。

【指定席は早々と完売】東京スプリントが行われた大井競馬場には朝から冷たい雨が降り続くなかでも、開門から多くのファンが来場。指定席は早々と完売し、取材に訪れたマスコミも帝王賞やJBCに匹敵するほど。特別に設けた臨時記者席まで満席になった。グッズ売り場には、この日から置かれた菜七子グッズを購入しようと、たくさんの人が詰め掛け、季節外れの極寒を吹き飛ばすフィーバーぶりだった。