【フェブラリーS】大健闘5着・菜七子「米GIブリーダーズC挑戦」の可能性は?

2019年02月19日 21時31分

小林祥晃オーナー(右)は菜七子の奮闘をねぎらった

 歴史的な一ページが刻まれた――。17日、東京競馬場で行われた第36回フェブラリーS(ダート1600メートル)に、藤田菜七子(21=美浦・根本厩舎)がJRAの女性騎手として初めてGIに騎乗した。4連勝中のコパノキッキング(セン4・村山)とのコンビで歴戦の砂の猛者、そして武豊ら名手に挑んだが、追い込み届かず5着。GI初制覇の大快挙は持ち越しとなったが、初の大舞台でも落ち着いた騎乗ぶりに今後の大いなる可能性を感じさせた。

 4角最後方から大外に進路を取ったコパノキッキング。日本一長い東京ダートの直線コース。藤田菜七子のアクションに応えて1頭、また1頭と抜き去るが、5ハロン通過60秒2とGIにしては落ち着いた流れでは5着まで押し上げるのが精一杯だった。

「パドックで緊張感が出てきたし、これまで東京のダート千六も何度も乗ったことがあるけど、違う景色に見えました。いつもはテレビなどで聞いているファンファーレはすごかったし、泣きそうになりました」

 数々のフィーバーを巻き起こして注目を集めてきた菜七子も初めて経験するGIの熱気には高揚するものがあった。しかもその熱度を上げたのは自分自身なのだからなおさら緊張もしたはずだ。

 それでも、馬場入りで飛び上がることもある相棒との返し馬もスムーズにクリア。無難にスタートを決めてスッと下げると、道中も我慢を利かせ、冒頭のような直線の伸びにつなげた。「前半は脚を温存して後半に生かす競馬をしようと思っていた。ただ、思ったより落ち着いたペースになったので…」。結果はあくまでも展開のアヤ。きっちりと馬の力は引き出した騎乗ぶりに、オーナーはじめ関係者、そして馬券を買ったファンも大方は納得いくものだろう。

「負けても“もう一回乗せたい”と思わせる競馬をしてくれる」。菜七子をよく起用するある調教師がこう話したが結果はもちろん、レースに向かう姿勢、分析、そして反省…一鞍一鞍地道に積み重ねて、今回の女性騎手GI初騎乗を“勝ち取った”と表現したい。オーナーの表情を見る限り、この日のレースぶりも信頼を高めるものになったはずだ。

 レース後、小林祥晃オーナーから「勝てば米ブリーダーズカップ(11月1、2日)に行こうと思っていたんだよ」と明かされた。しかし、この日の好騎乗で「夢は追い続けないと」とチャレンジは続いていくことになる。不安視されていたマイルの距離に完全にメドが立ち、交流GIかしわ記念(5月6日、船橋ダ1600メートル)が視野に。そこで活躍することができれば再び米ダートGIだ。選択肢はブリーダーズCスプリントかマイルになるとみられる。

 師匠の根本調教師は「これが第一歩。これがいい経験になる」。インティで勝った武豊も「何事も経験。これで次は“初めて”ではなくなるからね。GIに乗ることが当たり前になれば」とさらなる飛躍を約束する。

 この日はオーナーの勝負服を模した赤と黄色のリボンをつけて臨んだ菜七子。ただ、女性ならではの華やかさではなく騎乗で競馬を彩りたいのが本人の本音だろう。3月から女性騎手の新たな減量特典が始まり、平場では再び3キロ減の恩恵を受ける。地道に勝ち鞍を増やしていくことだろう。

「(菜七子の活躍が)後に続く若い人たちの自信になれば」(根本師)と今後、誕生する女性騎手へのいいお手本にもなるのは間違いない。女性騎手がGIに乗ること、それが一過性のフィーバーではなく武豊が言う「GIに乗るのが当たり前」となる時代はそう遠くないのかもしれない。