【安田記念・後記】GI初制覇モズアスコット 異例の連闘ローテ奏功の舞台裏

2018年06月04日 21時32分

観客の声援に応えるルメールとモズアスコット

 3日、東京競馬場で行われた第68回安田記念(芝1600メートル)は、フランケル産駒の9番人気モズアスコット(牡4・矢作)がコースレコードタイの1分31秒3でGI初制覇を成し遂げた。安田記念では89年のバンブーメモリー以来となる連闘V。この“衝撃走”に至るまでの過程、さらには同馬の今後の可能性について探ってみた。

 この日の2歳新馬戦でグランアレグリアが新馬戦のコースレコードとなる1分33秒6で快勝。週央から好天続きで前週同様の超高速馬場。マイル初参戦だった1番人気スワーヴリチャード(3着)、2番人気ペルシアンナイト(6着)の結果も踏まえれば、持ち時計の有無がストレートに結果に反映された格好だ。

 スタートは互角に切ったモズアスコットだが、3コーナー手前で進路をふさがれ、いったんは12番手まで位置取りを下げるロス。それでも鞍上のルメールは慌てない。

「無理に動いてバランスを崩したくなかったのでじっくりと待機。直線ではスワーヴリチャードをマークしながらスペースが開くのを待ちました」

 まさに最短ロードのみを走らせたゆえのクビ差勝ち。5着サングレーザーまで0秒2差の接戦を制したのは、馬の走力もさることながら優勝請負人たるルメールの手腕。人馬の総合力が見事に勝利を引き寄せた。

 もっとも、連闘策というビッグレースではめったに見られない異例のローテで好結果を出したのは、ほかならぬ矢作調教師の腕前だ。「連闘したから勝てたと思う。先週中の時点でこのまま追い切りを重ねても安田記念まで状態を上げ切れないと判断した」と、5月27日の安土城S(京都芝外1400メートル)へ出走。

 結果2着とはいえ、回避馬が出現して賞金除外の可能性はなくなった。さらに「オンとオフの使い分けのうまい馬。中間もテンションが上がらなかった」のが奏功した。実際に「返し馬を終えた時点で安心した。状態が良かったから」とルメールが振り返ったように、ときにネガティブな見方がされる“連闘使い”の有効性が実証された。

 ただし、まだ予断は許さない。速く走れる才能はある意味、もろ刃の剣であり、好時計での走破は言わずもがな脚元への負担も甚大だ。

 14戦無敗でターフを去った怪物フランケルの産駒。この夏を無事に過ごし、「これからもっともっと大きなところを勝って、ゆくゆくは世界的な種馬にしたい」という師の野望が実現することを願いたい。それがかなえられた時、今回の勝利がいっそう輝きを放つことになろう。