【有馬記念】「GI・7勝」「獲得賞金1位」キタサンブラックの大偉業を検証

2017年12月25日 21時34分

“チームキタサン”が見守る中、中山競馬場のライトにくっきりと浮かび上がったキタサンブラック。最多タイGⅠ7勝馬が10万人のファンに別れを告げた

 古馬GI戦線を締めくくる暮れの大一番、第62回有馬記念(24日=中山芝内2500メートル)は、キタサンブラック(牡5・清水久)が単勝1・9倍の圧倒的支持に応えて引退レースを逃げ切りV。サブちゃんこと歌手・北島三郎の所有馬(名義は(有)大野商事)として広く国民から愛された名優が最高の形で花道を飾った。社会現象にもなった強さの秘訣、そしてこれからの競馬界に残した足跡は何だったのか――。

 この有馬記念で12回連続のタッグとなった武豊の手綱に導かれ、直線は後続を寄せつけない“独り舞台”でゴール。それもそのはず、5ハロン通過が61秒5、道中に13秒台を2度も刻む緩ペースでは、GI・7勝に王手をかけるキタサンブラックを打ち破るだけの力量が、他の15頭にあるはずがなかった。

「スタートさえ良ければ先手を取りたいと思っていた。道中はリラックスすることに専念し、1周目の4角では行きそうになるのをなだめ、ゴール板を過ぎたあたりから落ち着いていいリズムで走れた。4角での手応えは昨年よりも良かったので待つことなくスパートした」と武豊。長年で培った名手の技量とパートナーとの信頼感が根底にあるとはいえ、鞍上のコメントからも危なげない勝利だったことが伝わってくる。

 清水久調教師は「今までの実績があるし、健康で丈夫な馬。だから(調教で)攻めても心配ないという安心感があった。競馬はジョッキーに任せていたが、ゲートさえ出ればこういう形になると思っていた。能力だけではなく、あらゆる部分で優れた馬」と人馬を信頼し切っていた。レースの展開も含め、すべてが理想通りに運んだことで、より自信を深めてレースを見ていたに違いない。

 一方でレースの絶対的中心馬だったキタサンブラックの逃げに対し、他陣営はあまりにも楽に勝たせてしまった感が色濃く映ったのも事実だった。スローペースをやすやすと逃がしただけでなく、直線では2着クイーンズリングのルメールが外斜行(戒告)、4着スワーヴリチャードのM・デムーロが内斜行(騎乗停止)でそれぞれ制裁を受けたが、いずれも勝ち馬の後方での話。仮に全馬がスムーズな進路取りだったとしても、勝敗ラインに突っ込んで来た馬がいたとは思えない。もちろん、有終の美を望むファンは多いし、公開抽選で絶好の2番枠を引き当て、自身に有利な展開をつくり出した運も含めてキタサンブラックの実力だ。

 だが、進化した実力とは裏腹に自身の走破時計は3着だった一昨年、2着だった昨年よりそれぞれ0秒5、1秒0遅い。“ゴチャついた2着争い”のもっと前で激烈なデッドヒートが見たかったという印象は拭えない。

 この日の勝利で種牡馬としてのシンジケート(60口)は1億5000万円追加の13億5000万円で組まれることが、レース後にけい養先の社台スタリオンステーションで共同代表を務める吉田勝己ノーザンファーム代表から明らかになった。他にもテイエムオペラオーを抜いて歴代トップの獲得賞金をつかんだサクセスストーリー、そして、日高生産馬の星として存在感を示した同馬の功績はあまりにも大きいが、レースは一期一会。よりスリリングにしのぎを削り合っての“最強馬”出現を待ち望んでいる。