アンカツが「今、最も大事に思っていること」を激白

2017年01月01日 19時00分

アンカツの笑顔には“成し遂げた男感”が漂っている

 安藤勝己元ジョッキーの引退式が行われたのは2013年2月3日の京都競馬最終レース終了後。JRA在籍は10年ながら、多くの若手ジョッキーたちに囲まれ、満面の笑みを見せる姿がそこにあった。偉大なる人馬は幕の引き方も大事。16年の回顧と17年の展望を交えながら、アンカツが今、最も大事に思っていることを語り尽くした。

 

 16年の競馬界もいろいろあったけどな。“去り方”について考えさせられた一年やった。

 

 まずは「人」。年は離れとっても、俺にとってはいい飲み仲間やったで(武)幸四郎の騎手引退はホンマ寂しいかぎりや。兄貴のユタカちゃんがまだ現役で頑張っとるんやからって思いは正直、あるんやけど…。オヤジさん(8月に武邦彦元調教師が死去)のこととも無関係やないやろし、何より幸四郎自身が決断したことやから。オヤジさんの分まで、新たなスタートとなる調教師生活を頑張ってほしいと願っとるわ。

 

 そして「馬」。ホンマ名馬の引退が多かった。また俺個人の思い入れを優先させてもらうと、最初に挙げたいのはホッコータルマエやね。本紙での連載を読んでもらっとる方には言うまでもないことかもしれんけど。地方も含めたダートのビッグレースで、ほとんど中心視させてもらった。逆に中心視しなかったんは現役最後の数戦だけやないか。いろんな意味でタフなあの馬にホレ込んどったわ。

 

 もちろん、年が年やったし、最後の方はピークを過ぎたのもハッキリ感じとったから、引退は仕方ないことなんやけど…。チャンピオンズCの最終追い切りを前にしての突然の引退やったやろ。無事ならその後に東京大賞典に出走して、そのまま大井で引退式をする話も出とっただけに、そこが残念でならん。

 

 意見はいろいろあると思うけどな。ホッコータルマエのように長く一線を張っとった馬は、最後の一戦がどんな結果に終わろうと、その姿を目にするだけで、いろいろ感情が動くもの。もちろん、有終Vを決めればドラマチックやし、逆に衰えた姿を見せてターフを去るってのも、それはそれで絵になるというか…。ホンマの競馬ファンなら馬券が当たった、外れたは別にして、心から拍手を送ってくれるんやないかって。結局はそういう「場」があるかが重要なんや。そう考えると皮肉にも「海外馬券発売元年」の16年が名馬の去り方を一層、難しくさせたんやないかって感じるわ。

 

 例えばモーリスとエイシンヒカリのケースや。優勝、惨敗と明暗分かれた香港カップの結果を言っとるんやなくて、2頭ともラストランが海外になったわけやろ。あれだけの名馬なんやから、やっぱり最後は日本で走ってほしかったわ。俺が古いタイプの人間やから、そう感じるだけ? いや、同じような思いを持っとる競馬ファンは多いはずやで。

 

 現実的な問題として選択肢に幅がない日本より、距離選択に幅がある香港(国際競走)をラストランにする日本馬は今後も増えるような気がしてならん。なら、せめて香港から凱旋後に日本で引退式をやる流れがフツーになってくれんと…。やっぱり名馬ほど、幕の引き方が大事。そのあたりのことは全ての関係者がもっと考えなきゃアカンことなんやないかな。

 

 なんか寂しい感じの話題になってもうたから、17年の明るい展望もしとくわ。王道路線をリードするんはキタサンブラックなんやないか。16年の活躍については改めて説明するまでもないやろし、何度も言っとるように、この馬の場合は付加価値というか、波及効果がすごいからな。やっぱりオーナーがサブちゃんで、鞍上がユタカちゃんってのはいろんな意味でデカいわ。一般のニュースにも取り上げられる貴重な存在やし、引き続き競馬を盛り上げるのに大いに貢献してもらわんと。

 

 キタサンブラックより若い世代ではサトノダイヤモンドに頑張ってもらわんとな。クラシック3冠で最も安定した成績(皐月賞3着、ダービー2着、菊花賞1着)を残したわけやし、何よりスケールの大きさを感じさせるわ。それに里見治オーナーも念願の初GI(菊花賞)を手にした後は、香港ヴァーズ(サトノクラウン)、朝日杯FS(サトノアレス)、有馬記念…勢いがハンパやないからな。ホンマ、勝負事ってのは一度キッカケをつかむと、いろんなことがいい方に向かうってのを改めて実感したわ。

 

 ちなみに現時点で牡馬クラシックの最有力候補とみとるのも、里見さんのサトノアーサー。新馬を勝った後のシクラメン賞で、上がり32秒7って信じられん脚を使って連勝しとるからね。そう考えると、あらゆる路線にいい馬がおるし、17年は「サトノの年」になるかもしれんね。

 

いずれにしても、競馬が盛り上がること。それが俺の一番の願い

 

★プロフィル=あんどう・かつみ 1960年3月28日生まれ、56歳。愛知県一宮市出身。76年に公営・笠松でデビューし、トップジョッキーとして長らく君臨。2003年にJRAに移籍すると、08年まで連続100勝以上するなどリーディングの上位で活躍。JRA・GI勝利は04年ダービー(キングカメハメハ)、08年有馬記念(ダイワスカーレット)など22勝、07年にはGI・6勝を記録した。公営在籍時を含めてJRA通算1111勝。13年1月に引退し、競馬評論活動を展開。本紙で「GIはアンカツに聞け!!」を大好評連載中。