【宝塚記念】6戦無敗レイパパレ “新旧女帝対決”の先に見据える“世界頂上決戦”

2021年06月21日 11時30分

寸分の狂いもない調整が続くレイパパレ(左)

 JRA上半期の総決算となる夏のグランプリ・第62回宝塚記念(27日=阪神芝内2200メートル)が6日後に迫った。牡馬有力勢の回避で図式は「新旧女帝対決」。ただ、新女王候補の6戦無敗レイパパレの目は女王クロノジェネシスに向いていない? 連勝街道の先にあるのは世界――。ディープインパクト産駒による“日本馬”の頂上決戦は実現するのか。大いなる夢の続きはすぐそこにある。

 無敗のまま迎えた4・4大阪杯はコントレイル、グランアレグリア、サリオスなど、現役トップクラスが参戦していた。無敗とはいえ、ファンの間で「本当にレイパパレは強いのか?」という疑念が広がったのも事実。それが4番人気の評価だった。

 同時に気になる材料もあった。「オイスターチケット一族のGⅠの壁」。無敗でのオークス制覇を目指した白毛馬ソダシの前に立ちはだかったのは「クロフネ産駒は芝2000メートル以上の重賞未勝利」。そんな“血の呪縛”が同馬にも存在していたからだ。

 昨年の秋華賞ウイークを覚えておいでだろうか? 鞍上にルメールを確保し、万全の状態で出馬投票しながら、レイパパレは4分の2の抽選で除外の憂き目に…。祖母オイスターチケットはレイパパレの母シェルズレイのほかにダブルティンパニー(5勝)、ブラックシェルなどを産んだ。シェルズレイはチューリップ賞、ローズSでともに2着と好走したが、3歳牝馬3冠は5、7、5着。ブラックシェルはNHKマイルC2着、日本ダービー3着。そしてレイパパレの全兄シャイニングレイもGⅡホープフルS(当時)を制したものの、その後は屈腱炎発症で完全復活はならなかった。

 運も含めて「GⅠを勝てない一族」。関係者やファンの間でそうやゆされることもあった。ところが…。

 重馬場で行われた大阪杯は、果敢に先手を奪うと力の要る芝をモノともせず、4角手前からじわじわと後続を引き離していく。直線では馬場の外へ持ち出し、あとは突き放す一方。ゴールでは後続に4馬身差の快勝。自らの力で不吉なレッテルを払拭し、一族悲願のGⅠタイトル奪取へと結びつけたのだ。

「これまでいい産駒を数多く出していましたけど、大きなところには手が届かなかったんです。それだけに前走の勝利で、この血統の殻を破った感じはありますね」

 名門・松田国英厩舎で長らく助手を務め、この血筋を知り尽くす高野調教師は「殻を破った」と表現した。レイパパレの大きな可能性、そしてさらなる進化を確信したからにほかならない。

「大阪杯後は回復も早かった。疲労感がなかったのは成長ですね。こうなってほしい、という体質になってくれました。トレセンに帰厩してからは牝馬らしくシャープな体つきになりましたけど、放牧先でリラックスしている時のシルエットは兄(シャイニングレイ)と似ていた。少し小さくしたくらいですごくいい馬になっています」

 その兄の現役時の最高体重は538キロ。100キロ以上も体重差があるのに、見た目の印象が“同格”に思えるほど、迫力を増している。

「大阪杯の勝利が成功体験になったので、今回は前回をなぞるようにしています」と同師。今月10日に帰厩後は、レースまでに坂路で4本の時計を出す、前回と同じメニューを課している。大阪杯3着のコントレイルは疲れが抜け切らずに早々と回避を発表したが、あれだけタフな馬場で競馬を主導し、ほとんどダメージが残らなかった事実は特筆もの。あの小さな馬体にどれだけのパワーが備わってきたのか。怖くなるくらいだ。

「1週前追い切り(16日)は併せ馬の追走の仕方、並んで行く時のしぐさ、並んで我慢させる時間、そしてラスト1ハロンの反応…。時計は遅かったけど、やりたいことはできました。大阪杯の時とほぼ同じ時計で走れました」

 栗東坂路で4ハロン55・6秒。前走時は同55・5秒だった。ここまで寸分の狂いもない調整が続いている。「ひとつだけ違うのはゲート練習をしていることですかね。前回は駐立が乱れたので確認をしました。ジッと立てているので大丈夫です」。まさに何の不安もなく、前半戦総決算の大舞台に向かっている。

「もちろん他馬も強いという認識を持ってレースに臨みます。距離(初の2200メートル)をもたそうとかは考えずに、乗りやすい状況をつくることに主眼を置いてきた。先のことは考えずに、目の前にある一戦一戦に向けてしっかりと仕上げていくだけです」

 高野調教師はこう気を引き締めるが、もちろん“次”の準備は済ませている。すでに1次登録を済ませている10・3仏GⅠ凱旋門賞(パリロンシャン競馬場=芝2400メートル)への挑戦(※1)だ。その凱旋門賞で最大の注目は、今年の英オークスを16馬身差の歴史的な大差で勝ったスノーフォール(※2)だろう。同馬はレイパパレと同様、日本のノーザンファームで生産されたディープインパクト産駒。父は19年に死んだが、その遺伝子を受け継ぐ産駒は残りわずか。この秋の世界最高峰のレースで、日愛を代表するDI産駒が激突するかもしれないのだ。

 長年にわたる血の呪縛を打ち破ったレイパパレが今度は宿命の世界頂上決戦へ――。宝塚記念の結果を踏まえての参戦にはなるが、無敗の女王が世界へと羽ばたくためには、圧倒的なパフォーマンスで国内を制圧しなければならない、と思っている。


 ※1 今秋の凱旋門賞にはレイパパレ以外に、宝塚記念出走予定のクロノジェネシスとモズベッロ、ステラヴェローチェ、ディープボンド、マイネルウィルトスの計6頭の日本馬が登録している。

 ※2 6月4日の英エプソム競馬場で行われたオークス(芝2410メートル)で、スノーフォール(牝3=父ディープインパクト、母ベストインザワールド、母父ガリレオ 愛エイダン・オブライエン厩舎)は16馬身差という同レース最大着差で勝利。ブックメーカー各社は同馬を凱旋門賞の1番人気に。16年凱旋門賞馬ファウンドのめいでもある。

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