【日本ダービー】早仕掛けでも「力が違い過ぎた」キングカメハメハ

2021年05月28日 20時00分

安藤勝己氏も「力が違い過ぎた」と振り返るキングカメハメハ

【松浪大樹のあの日、あの時、あのレース=2004年日本ダービー】

 2004年の日本ダービー。この年の直線は声が出ましたねぇ。馬券を買った馬が勝負圏内にいれば、ダービーでなくても声は出るものなんですけど、この時はヘビメタバンドのライブ中かと思うほど、ノドが裂けんばかりに叫んだ記憶があります。いやあ、燃えに燃えた1戦でした。

 馬券は◎だったキングカメハメハから買っていて、ハーツクライが2着でもハイアーゲームが2着でも当たりは当たり。でもね、直線で全馬を交わしてほしかったんですよ。大外からぶっ飛んできたハーツクライに。もちろん、予想は予想でしっかりとやってました。でも、レースでは橋口弘次郎調教師の馬を全力応援。それがダービーにおける当時の僕のスタンスで、それが直線での絶叫になったわけです。

 しかし、当の本人は至って冷静だったとか。もちろん、それには理由があって、なんでも道中でハーツクライを見失ってしまい、それ以降は同じ勝負服(社台RHの黄色と黒ですね)のフォーカルポイントをハーツクライと勘違い。直線で伸びを欠く管理馬(フォーカルポイントですけど)の姿を見て、一度は「今年のダービーも終わった」と思ったそうです。猛追したハーツクライに気付いたのはゴールの直前だった…は本人から聞いた嘘のようなホントの話ですよ(笑い)。

「レースが終わった直後にな、関東の調教師が俺のとこに来て〝橋口さん、あなたはホントにすごい人だね〟と言うんだよ。〝ダービーという舞台で管理馬があれだけの脚を使って追い込んできているのに、あなたは声も出さず、静かにレースを見守っていた。いや、本当にすごい。自分だったら大声を出していただろうし、冷静さを欠いていたはずだ〟と。実際のところは全く違うんだけど、そこまで褒められたら、ホントのことを言うのは恥ずかしいやろ。なので〝ああ、そうかい〟とだけ言って、そそくさと検量室に逃げたんだ」

 仮に差し切ってダービーを優勝していたら、レース後の記者会見でなんと答えていたんですかね? 想像するだけで笑いが込み上げてくるエピソードですが、実際のところを言えば、ハーツくらいがどれだけの脚を使ったとしても、あのレースのキングカメハメハを捕まえることはできなかったと思ってます。正直、力が違い過ぎました。

 騎手を引退した安藤勝己さんに当時のレースについて聞いたことがあります。それこそダイレクトに「明らかな早仕掛けでしたよねえ」なんて。否定しないどころか、自ら「そう、むちゃくちゃ下手に乗った」と言ってましたね。でも、その乗り方でいいとも思っていたそうです。

「力が違い過ぎて、どう乗ったって負けようがないんだもの。それだったら下手に包まれるとかの不利を食らうよりは、早仕掛けでもなんでもいいから、不利なく走らせたほうがいい。実際、勝ったんだから、あれはあれでいいの」。

 キングカメハメハをマークしていたハイアーゲームはゴール前で逆に脚をなくして3着に転落。正直、ハーツクライの豪脚もキングカメハメハの早仕掛けがあったからこそでした。あの日のキングカメハメハが見せたパフォーマンスは、それこそ〝肉を切らせて骨を断つ〟の典型であり、とてつもなく強い内容だったんですよね。

 翌年のダービー馬ディープインパクトとともに日本の生産界を長くけん引したキングカメハメハのポテンシャルはすさまじかった。仮にキングカメハメハの早期引退がなければ…と思うファンもいるのではないでしょうか? 2頭のダービー馬の激突は競馬史の残る名勝負となっていたはずですから。

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