【オークス】ソダシに〝黒いデータ〟血の壁説を追う クロフネ産駒に2400は…?

2021年05月17日 11時30分

オークス制覇へ黒いデータが見えるが…

 純白のアイドルホースに“真っ黒い闇データ”が忍び寄る…。春のJRA・GⅠシリーズもいよいよ佳境。日曜(23日)は東京競馬場で3歳牝馬の頂上決戦・第82回オークス(芝2400メートル)が行われる。GⅠでしのぎを削ったサトノレイナスが日本ダービーに参戦することで無敗の桜花賞馬ソダシ(須貝尚介厩舎)のV確率がグンと上がったように思われたが、一方でファンの間でささやかれているのは「距離の限界説」。白毛のスーパーアイドルは血の呪縛を解くことができるのだろうか。

 桜花賞を1分31秒1の驚異的なレコードで、無敗のまま牝馬1冠目を制したソダシ。阪神JF、桜花賞でハナ、クビ差の接戦だったサトノレイナスがダービーへの参戦を決めたことでオークスはソダシ一色ムードだが、レース直後から関係者やファンの間でささやかれているのが「ソダシ距離限界説」。そこには厳然たる“黒いデータ”が存在する。

 ソダシの父クロフネ(注)の産駒はJRAの平地重賞を40勝。ただし、その勝ち鞍はすべて1800メートル以下。芝2000メートル以上の重賞成績は<0・7・8・110>で勝利はひとつもない。GⅠ勝利は7頭でソダシ以外はフサイチリシャール(朝日杯FS)、スリープレスナイト(スプリンターズS)、カレンチャン(スプリンターズS、高松宮記念)、ホエールキャプチャ(ヴィクトリアマイル)、クラリティスカイ(NHKマイルC)、アエロリット(NHKマイルC)とすべて1600メートル以下。2400メートルのGⅠは08年ダービーのブラックシェル、11年オークスのホエールキャプチャのいずれも3着が最高着順である。

 血の呪縛――。その打破こそがソダシのオークスでの最大のテーマなのかもしれない。

 ヒントを与えてくれるのは現役時代のクロフネを調教助手として担当し、誰よりも同馬を知る渡辺勉厩務員(現石坂公一厩舎)。距離限界説の真相を探ってみると…。

「クロフネ自身にとって2400メートルは長かったんじゃないかな」と同厩務員は即答したが、それはあくまでも「自身」だと強調する。

「2400メートルはダービーの1走(5着)しか走ってないけど…。3角から行ってしまったのもあるが、ダービーからクロフネの悪いところが出てしまったような感じだった」と当時を振り返る。

 クロフネは他の馬とはストライドの大きさが違って、調教でも他馬よりもすぐ前へ出てしまうところがあり、併せ馬が難しかったそうだ。加えてレースはストライドを大きく伸ばして全力で走るタイプで「ダートの武蔵野S(東京1600メートル)、JCダート(同2100メートル)も3角から行ってしまった。他馬が後ろから来ないのでスピードで押し切ったけど、マイルから2000メートルくらいがベストだっただろうね」。その2走は後続に1秒4、1秒1差のぶっちぎりVなのは驚きだが…。ただし、ソダシに対してはその概念がないようだ。

「父の血が出ると距離への不安があるかもしれないけど、ソダシは母系のシラユキヒメ(祖母)が出ている感じだね。金子オーナーの血の結晶とも言うべき素晴らしい馬が現れたと思っている。母の父キングカメハメハも同じ(松田国英)厩舎にいたのでよく知っているけど、あの馬は万能タイプ。あれほどのオールラウンダーはいないと思う。そのことでソダシは道中のコントロールが利いているんだろうし、その血の呪縛をクリアしてくれるのはソダシしかいないと思っている」

 今年1月17日に死んだクロフネにとっては残り少ない産駒。それだけに渡辺厩務員の思い入れも深いが、この限界説を覆すのは「この白毛の怪物しかいない」とのことだ。

 激戦だった桜花賞のダメージを心配する声があったが、2週前(6日)の坂路では古馬オープンのロジクライを馬なりのまま突き放してラスト1ハロン11・9秒(4ハロン53・4秒)。そして12日の1週前追い切りではウッド3頭併せで楽に先着してラスト1ハロン11・7秒(6ハロン86・8秒)。疲れどころか、さらに調子を上げてきた印象さえ受ける。

「2週前は馬なりであの時計が出たからね。調教でこれだけの負荷をかけたら普通の牝馬はまず耐えられない。ソダシはまったくへこたれないし、もう牝馬じゃない。牡馬やね(笑い)」

 ソダシを担当する今浪隆利厩務員が桜花賞時に語っていたソダシ=ゴールドシップ化に続く、ソダシ=実は牡馬!? こんなことを言及するくらい、短期間で大きな進化を遂げているのだ。

「札幌2歳Sもそうだったし、桜花賞でも決して楽じゃないペースをついて行って押し切っている。相当なスタミナがないとできない芸当。距離が課題と言われるが、直線までこの馬のリズムを崩さずに走れれば大丈夫だろう」

 パートナーに絶大なる信頼を寄せている今浪厩務員にとって「距離限界説」など存在しない。

 今やアイドルホースの域を超えて、現役最強馬へと上りつめようとしているソダシ。オークス制覇、そして秋に無敗で牝馬3冠を達成となれば…。血統背景からダートがマイナス要素になるはずもなく、来春はドバイワールドカップ挑戦という夢プランも現実味を帯びてくる。血の呪縛を打ち破ることがソダシ最強伝説のスタート。新緑の府中の杜を白い閃光が突き抜ける――。クラシック2冠はあっさり達成されるかもしれない。

 ※注 00年に松田国英厩舎からデビュー。NHKマイルCでGⅠ初制覇。続く日本ダービーは5着、神戸新聞杯は3着に敗れたが、ダートに転じた武蔵野S、ジャパンカップダートを大差で勝利し、01年のJRA賞最優秀ダートホースに選ばれた。通算10戦6勝。02年から種牡馬となり7頭の芝GⅠ馬を出した。

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