【皐月賞】ノーリーズン 今だから明かせる〝◎〟原稿の秘密

2021年04月16日 20時20分

単勝オッズ115・9倍での激走を見せたノーリーズン

【松浪大樹のあの日、あの時、あのレース=2002年皐月賞】

 ノーリーズンといえばスタート直後に落馬した菊花賞を思い出す人が多いと思うんですけど、タイトルを獲得したのは皐月賞。なので、こちらの方を優先的に思い出してほしいところですね(苦笑)。

 単勝万馬券(オッズは115・9倍!)での激走でしたが、1分58秒5の走破時計はもちろん、そのレース内容も強かった。秋初戦の神戸新聞杯ではシンボリクリスエスの2着に入っていましたし、フロックによる勝利ではなかったと思うんですけど、その後に勝てないと印象が良くないんでしょうか。

 当時といえば、ノーリーズンの父でもあったブライアンズタイム産駒が強い時代で、サンデーサイレンスに対抗できる唯一の存在でもあったんですけど、20年の時が経過した現在、栄華を極めるサンデーサイレンス系とは対照的にブライアンズタイムのサイアーラインは途絶えつつあります。これも当時は予想できなかったことです。難しいですね、競馬は。
 
 2002年の皐月賞に話を戻しましょう。その週の木曜日、栗東トレセン事務所内にある記者室へ行くと「おお、なんかネタになる馬はおらへんか」とK先輩が。なんでも「週末に穴っぽい関西馬で外面を書いてくれって話やねん。でも、全く思いつかへん。なんかおらん?」。

 テーマありきで記事を書くことは往々にしてあることなんですけど、もうすぐ出走馬が決定する木曜の午後ですからねえ。若葉S3着には敗因があったアドマイヤドン(4番人気)に、毎日杯を勝ってきたチアズシュタルク(5番人気)とかではダメなんでしょう?

「あかん、そんなの。もうちょっとパンチが利いたヤツやないと」
「でも、そんな馬からは景気のいいコメントは出ませんよ」
「ええねん、ええねん。ちょっとしゃべってもらったら、うまいこと書くから」

 そんな東スポチックなやりとりがあったのち、僕がK先輩に推奨した馬がノーリーズンでした。

「この馬の何がええねん? 前走で惨敗しとるやん」
「キャリア2戦しかない馬がオープン初挑戦で惨敗なんて珍しいことでもなんでもないし、そのレースを度外視すれば2戦2勝。大舞台に強いブライアンズタイム産駒で母父がミスプロ。半姉のロスマリヌスは2戦2勝で無事なら桜花賞に出ていたであろう素質馬で血統もしっかりしていますし、なによりも6月の遅生まれというところがポイントです。池江厩舎はメジロマックイーンのイメージがいまでも強く、徐々に力を付けていく馬が多いと誰もが思っている。そんな晩成型の厩舎で遅生まれの馬が抽選とはいえ、クラシック初戦に間に合った──。そこに焦点を当てればいいんですよ。これこそ類いまれなる素質の証明とか書いとけば問題ありません」
「まあ、よくわからんけど、なんかいけそうやな。よっしゃ。そんな感じで調教師に話を聞いてくるわ。まだ事務所におったし」

 そんなこんなで出来上がったのが週末の新聞です。いいかげんと言わないでください。僕らも一生懸命やっているんですから(苦笑)。もっとも、池江泰郎調教師に話を聞きに行ったK先輩は「結構、しつこく食い下がったけど、そこまでええこと言ってくれなかったで。ホンマにええんか?」と頭をかきながら戻ってきて、バリバリの〝◎〟原稿を書いておきながら、感触がひと息だったということで馬券も買わなかったとか。それどころか、20年近くがたった現在でも、あの皐月賞を見ていないみたいですよ(笑)。

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