【大阪杯】アンビシャス 今でも思い出す名手会心の先行策

2021年04月02日 20時23分

アンビシャスがキタサンブラックをクビ差競り落とし、ガッツポーズする横山典弘騎手

【松浪大樹のあの日、あの時、あのレース=2016年大阪杯】

 僕にとっての大阪杯といえば、1992年のトウカイテイオーがダントツ中のダントツです。年齢がバレますけど…。その次は翌年のメジロマックイーンですかね。やっぱり年齢がバレますけど…。

 どちらも骨折からの長期休養明けで、多少の不安説がありながら、それを一蹴する──次走の天皇賞・春で1番人気の支持を受け、それに応えられないところも同じ。「いや、本当にいい時代だったな」のフレーズは現在を否定するように思えるので、なるべく使わないようにしているのですが、やっぱりいい時代だった(苦笑)。

 余談ですが、人気沸騰中のゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」に登場するトウカイテイオーのスキルに〝究極テイオーステップ〟というのがあるんですよ。これ、絶対に同年代の方が考えてるな…と。ドラマチックな彼の半生ではなく、あの独特なステップに着目するなんて、当時を知ってないと無理。初めてトウカイテイオーを見たときの僕の感想も「なに、この歩き方?」でしたから(笑)。

 しかしながら、あのころの僕はトレセンどころか、東スポにも入社していない競馬ファンの一人。サイドストーリーの一つも知りませんでしたから、このコラムの趣旨とは少し異なります。なので、ここではバリバリの競馬記者になっている最近の…といってもすでに5年も前のレースになっているのですが、アンビシャスが勝った2016年の大阪杯を取り上げたいと思います。

 このレースを簡潔に説明すれば、この一戦から武豊騎手が手綱を取ったキタサンブラックを、同様にこの大阪杯が初めての騎乗になった横山典弘騎手のアンビシャスが徹底マーク。クビ差で競り落としたところがゴール──というものだったんですが、アンビシャスの手綱を取った多くの騎手は同馬の瞬発力を生かすような乗り方をしていたんですよね。メンバー的にも超スローが濃厚な一戦で後方からの競馬では間に合わない。戦前から「どうやって乗るのか」が話題になっていました。

「オレはね、ノリ(横山典)はアンビシャスを先行させるような気がするんだ」とは鞍上が決まった際に音無秀孝調教師から聞いた言葉。同師が例として挙げたのは今回と同様に乗り替わり初戦で結果を出した2008年の中山記念。カンパニーが2番手から抜け出して勝ったレースです。

「なかなか勝ち切れない状況の中で〝ノリなら違うことをしてくれるんじゃないか〟と期待していたんだけど、当時のカンパニーは末脚で勝負するイメージが定着していたし、彼が主戦になった以降も似たような競馬をすることがあった。その乗り方が間違っていたわけではないんだよね。でも、あの中山記念はノリが先行策をしてくれたからこそ勝てた。これも間違いないわけで…。アンビシャスの今回の状況は当時に似ている気がする。誰もアンビシャスが前に行くなんて思ってないけど、ノリ(にとって)は誰がどう思うかなんてことは関係ない。今回のアンビシャスは結果が欲しいわけで、勝とうと思ったら絶対に先行策──。ノリならそう考えるんじゃないかな」
 
 直線の攻防は本当にアツかったですよ。なにせ、思い描いた通りの状況になったわけですから。そして、アンビシャスの単勝と馬単の馬券で勝負していた僕はこうも思ったんですよね。「キタサンブラックって強ぇな」と。マイペースだったとはいえ、アンビシャスよりも2キロ重い58キロを背負って着差はクビ。あれほどの実績を残していた馬に対し、評価をなかなか上げなかった僕ですが、この一戦を見て「本当に強かったんだな」と遅ればせながら認識を改めたことを今でも覚えています(苦笑)。

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