<新人騎手>井上敏樹この夏の経験で“末脚爆発”

2014年07月19日 09時00分

井上敏樹騎手

<連載:今年は当たり年!?新人騎手ローカル奮闘中(2)>

 他の同期が95年4月以降の生まれであるのに対し、井上敏樹(19)の誕生日は94年12月5日。つまり1学年上にあたる。どんな事情があったのかと尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「競馬学校への入学願書の提出が間に合わなかったんです(笑い)。というのも、騎手になりたいと考えるようになったのが遅かったので…。母の勧めで中学2年のころから近所の乗馬クラブに通ってはいたのですが、最初はあくまで趣味の一環でしたから。しかしだんだんのめり込んでいくうちに、ジョッキーという職業に憧れを抱くようになりました。ただその1週間ほど前に、願書受付期間は過ぎていたんですけど(笑い)」

 それでも騎手になりたいという情熱が冷めなかったため、1年間の“浪人”を決意。地元高校に通いながら乗馬を続け、晴れて翌年競馬学校に入学。今年3月1日の中山開催(1Rダイメイリシャール=7着)で騎手生活をスタートさせた。

 デビューからここまでの約4か月間を振り返り思い出に残る一頭を挙げてもらうと、バンクシー(牡4・尾形充)の名前が挙がった。

「初めて勝たせてもらった馬というのも当然ありますが、初勝利(4月13日=中山8R)の時の感覚が忘れられないので。勝負どころで馬がスーッと勝手に上がっていってくれたんですよ。それまでも競馬には何回も乗せてもらっていましたが、あんな感覚は初めてでした。まさしく馬に勝たせてもらったレースです」

 騎手になって初めての夏は函館競馬場に拠点を置いてスタート。毎朝の調教、そして週末のレースと、精力的に汗を流している。

「日々勉強です。東西からたくさんの先輩ジョッキーが集まってきているので、学ぶべきものがたくさんあります。また中央場所と違ってコースが小回りなため、レースも厳しくタイトな印象です。でも毎日調教で乗っている場所で競馬ができるのは心強いし、美浦ではなかなか知り合えない関西の関係者とつながりができるのも貴重なこと。函館滞在は師匠の本間先生が決めてくださったのですが、本当にいい経験をさせてもらっています」

 6日(函館7R)にはトーセンプリモ(牝5・古賀史)で1着となり函館初勝利。道中インでジッと我慢し、直線先行2頭の間を割ったロスのないレース運びは、まさにこの夏の“経験”が実を結んだ一戦と言えよう。

 同期の松若や小崎が早くも2桁勝利を挙げるなか、通算勝利は現在3勝。しかし当の本人は確かな手応えをつかんでいる。

「同期に負けたくない気持ちはもちろんあります。でもいろんな人たちに応援していただいて、自分なりにはここまで順調にきていると思ってるんです。まだまだこれからです」

 逃げから追い込みまで馬の脚質が千差万別のように、ジョッキーのブレーク時期もまた多様。来るべき“末脚爆発”の日に向けて、今は北の大地で黙々と腕を磨き続けている。

☆いのうえ・としき=1994年12月5日生まれ。埼玉県秩父市出身の19歳。美浦・本間忍厩舎所属。血液型О。今年3月1日の中山競馬場でデビュー。同じく中山開催の4月13日にバンクシー(4番人気)でJRA初勝利を挙げた。通算成績は150戦3勝(13日終了時点)。