【弥生賞】マカヒキの凱旋門賞挑戦まで見えていた? 型にとらわれない金子オーナーの勝負哲学

2021年03月05日 21時00分

鞍上ルメールで強烈なパフォーマンスを見せたマカヒキ

【松浪大樹のあの日、あの時、あのレース=2016年弥生賞】

 多くの競馬ファンにとって、2016年の日本ダービー馬マカヒキの位置付けは高くないでしょうね。凱旋門賞以降の成績は超一流どころか、一流馬のそれですらないのですから、それも仕方がありません。

 しかし、現在のマカヒキはバージョン2。2016年凱旋門賞までと2017年京都記念以降とは分けて考えるべき──と僕は考えています。

 どこにも不安がなく、そのポテンシャルを余すところなく発揮していたバージョン1時代のマカヒキは本当にすごかった。そして、そのすごみを最も感じたレースこそが2016年の弥生賞。友道康夫調教師も「あの勝利で自信を持てたことが大きかった」とダービー制覇への転機となった一戦と位置付けていましたが、ラスト2ハロン11・3―11・3秒の高速ラップを差し切ったパフォーマンスはあまりに強烈でした。

 ちょっとした素質馬が出てきたとき、僕は「正直、どれくらいのレベル?」なんて聞くことも少なくないんですけど、友道厩舎でのマカヒキは別格中の別格で、あの馬に並ぶ馬どころか近い馬さえもいないそうです。

 弥生賞の話をしましょう。2番人気での出走になったマカヒキですが、このレースは朝日杯FSを優勝したリオンディーズ、同2着エアスピネルの2頭が早い段階で出走を表明。マカヒキの出走が決まるまでは一騎打ち濃厚の下馬評だったんですよね。

 皐月賞の優先出走権は3着までですが、前述の2頭が出走するのであれば、現実的な出走枠は残り1つと考えるのが妥当なところ。で、当時のマカヒキの現状といえば、若駒Sを勝っていたので皐月賞の出走はほぼOK。しかし、ダービーの出走は微妙なところでした。

 賞金加算が必須であることを考えれば、弥生賞はベストな選択とは思えませんでしたし、若駒Sで手綱を取ったルメール騎手はサトノダイヤモンドでクラシックへ向かうことも決まっていた。川田将雅騎手への乗り替わりも既定路線でしたから「楽な相手関係のレースで賞金を加算し、本番前に鞍上もスイッチして感触を知ってもらったほうがいいのでは?」と僕は思いました。で、トレーナーにもその部分を聞いてみたんです。

「まあ、普通はそう考えるよね。でも、弱い相手に連勝を続けるよりも、強い相手と戦って現在の力を見たほうがいいとオーナーは言うんだよ。ジョッキーに関しても“いけるところまではルメール騎手でお願いしたい”と。成功する人は常人と考え方が違うと思った」と友道調教師。

 ディープインパクトにキングカメハメハ、クロフネにアパパネと多くの名馬を所有し、今年はソダシにアカイトリノムスメ。「リアル・ダビスタ」なんて言葉で表現される金子オーナーですが、成功の根底にあるのは常人と違う考え方かもしれません。競馬は予測不能な何かしらのアクシデントで力を余すことがある。だからこそ、保険を掛けたくなってしまうもの。しかし、それでは自信を持って本番へ向かえないということなのでしょうか。

 この一戦で暫定王者へと地位を上げたマカヒキは皐月賞2着を経て、第83代の日本ダービー馬となりました。そして、秋には凱旋門賞へ──。このとき、ルメール騎手に戻った理由について「フランスの競馬とマカヒキの両方を知っている騎手だから」とトレーナーから聞かされました。もしかしたら、弥生賞の時点で秋のことまで考えていた…は飛躍し過ぎでしょうか。

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