【シンザン記念】アーモンドアイが初重賞制覇 たったの1戦で確信が持てた〝可能性∞〟

2021年01月06日 20時06分

名馬の階段を一気に駆け上がったアーモンドアイ

【松浪大樹のあの日、あの時、あのレース=2018年シンザン記念】

 3年前のシンザン記念。僕は馬場状態と展開を考慮してツヅミモンという540キロの巨漢牝馬を◎にしていました。もちろん、4コーナーを向いた段階で「もらった」と思いましたよ。

 何もかもがイメージ通り。5ハロン通過61秒8のスローペースで1番人気馬は後方から数えて3頭目の位置を走っていた。11頭立ての7番人気馬が勝った場合、どれだけの高額配当になるのだろうか──。正直、札束が頭の中を舞っていました。まあ、それもアーモンドアイの末脚によって霧散してしまうことになるのですが(苦笑)。

 しかし、このレースでアーモンドアイが与えたインパクトは、それ以降のレースと比較しても上位のものだったと思いませんか?

 シンザン記念のレース後記を任されていた僕は、その始まりの部分で「中山金杯=セダブリランテス→フェアリーS=プリモシーンに続き、同一馬主の所有馬で、戸崎圭が年明け3日間の重賞3連勝を達成──。これだけでも十分にエポックメーキングな出来事で見出しに困らないが、アーモンドアイがこのシンザン記念で見せたパフォーマンスはそんな偉業がかすむ? ほどの衝撃だった」と書いています。多くのスポーツ紙がそうであったように、僕も最初は前述した部分にフォーカスするつもりでした。

 しかし、ゴールした直後、すぐに考えを改めましたね。今回、優先すべき事項はそこではない。アーモンドアイの途方もない強さを引き出す内容でなければ、この記事の価値は低い──。そのように思えたんです。

 この日、アーモンドアイの背中にいたのは主戦のルメール騎手ではなく戸崎圭太騎手。すぐに1頭の馬が頭に浮かびましたね。同騎手が騎乗し、引退レースとなった2014年の有馬記念を勝ったジェンティルドンナ。あの馬も2012年にシンザン記念を勝っていたんです。未勝利勝ち直後の参戦も同じ。彼に2頭の比較をしてもらえるのであれば、それはシンザン記念で刻まれた多くの偉業や記録を超える素晴らしい内容になるのではないか?

 レース後の勝利インタビューではジェンティルドンナの馬名が出ないように…とひたすら願ってましたね(苦笑)。コロナ禍で取材が制限されている現在では難しくなりましたが、当時は会見や囲み取材が終わったあとに話を聞きに行くこともできました。もちろん、関東所属で面識のない戸崎圭騎手が本心を語ってくれる保証はなく、そもそもが名馬との比較を嫌う騎手も少なくない。GⅢを勝ったばかりの3歳馬とGⅠ7勝の名牝の比較は時期尚早──。そう一蹴される可能性も大いにあるだろう、と。

 しかし、戸崎圭騎手は「ジェンティルドンナのような馬になれるか」という直球の質問に「乗っていて〝強い〟と感じる馬。切れるタイプですが、馬場を問うようなレベルではありません。その可能性は十分にあると思います」。そう言い切ってくれたのです。

 それは期待とかのレベルでなく、断言に近いもののようにも思えました。その見識が正しかったことは、その後のアーモンドアイの活躍が示す通りです。

 翌日の紙面見出しは「可能性∞アーモンドアイ」。多くのレースを制しただけでなく、多くの感動を残して去った同馬のキャリアのすべてを知った現在では、それは誰もが想像できるものだったように思えますが、わずか3戦目のあの時点でなら、それは「先見の明がある内容」だったのではないか、と自画自賛しています(笑)。

 もちろん、そこまで踏み込める内容になったのは戸崎圭騎手がありのままの感触を伝えてくれたからこそでした。同時にコロナ禍の現在では選択していない内容だったかもしれませんね。