【有馬記念】フィエールマン 突っ走ることが男の勲章!体調、鞍上、相手関係までが好転

2020年12月21日 17時00分

厳寒の美浦トレセンで爪を研ぐフィエールマン

 新型コロナウイルス禍の中、競馬を継続してきたJRAは、年の瀬の大決戦・第65回有馬記念(27日=中山競馬場・芝内2500メートル)で大団円を迎える。3歳牡牝の無敗3冠達成、白毛馬のGⅠ初制覇など、ニュース満載の中で際立っていたのは牝馬の大活躍。19日に引退式を行った希代の名牝アーモンドアイに導かれるように、この大一番でもファン投票1、2位は牝馬だが、ここで反撃ののろしを上げたのがフィエールマン。感染防止対策を施しながら“密着”取材を続けてきた手塚キュウ舎担当・山村隆司記者のリポートをとくとお読みいただこう。

 すべての男は消耗品である――。村上龍のそんなエッセー本のタイトルが頭をよぎるような競馬シーンが、これでもかと続いている。今年行われたJRAの古馬・芝GⅠ(牝馬限定戦を除く)9鞍のうち8戦は牝馬による勝利。数々の戦士が女丈夫の前にひざまずき、屈辱に唇をかんできた。有馬記念の投票結果も牝馬2頭(クロノジェネシス↓ラッキーライラック)が当然のように1、2位独占。悲しいかな、問答無用の“オンナの時代”が到来したのだ。

 しかし男たちよ、あきらめるなかれ。潮流にあらがい奮い立つ影が、この寒風のかなたに見えないか。現れた勇者の名は「気高く、勇ましく」を意味するフィエールマン。今年、古馬の牡馬で唯一、芝GⅠ(天皇賞・春)を勝った馬である。事実、前走の天皇賞・秋はアーモンドアイに屈服(2着)した。それでも女帝にすれば、全GⅠ9勝で最小着差(半馬身)の辛勝でもあったのだ。そう、これが男の意地。管理する手塚貴久調教師が悔しげに前走を振り返る。

「普通のスタートを切ったけど、直後に両サイドから挟まれて位置取りが後ろに…。さらに直線も外に持ち出すタイミングがワンテンポ遅れてしまった。直線はものすごい切れ(上がり3ハロン32秒7は出走馬最速)を見せてくれたけど、もう少し前で流れに乗れていれば、さらに際どい勝負になったかもしれない」

 敗戦の中の光明、それは歴史的名馬に準ずる力量の再確認でもあった。だからこそ男は立ち上がる。有馬記念初参戦の昨年は4着に終わったが「今年は買い材料がふんだんにあります」。担当の名畑俊助手もリベンジの決意を高らかに宣言する。

「まず強調できるのは体調です。昨年は凱旋門賞(12着)後の帰国初戦。元来、寒くなって調子を上げるタイプですが、さすがに遠征疲れが残る中での出走でした。その点、今年はレース後のダメージもなく、臨戦過程は申し分なし。1週前追い切りはかかる面を見せましたが、実は今春の天皇賞の1週前もそんな感じでした。だから、むしろいいガス抜きになったと思うんです」

 これまで中山コースは山藤賞(1勝クラス)1着、GⅡアメリカJCC2着、そして有馬記念4着。決して相性抜群というわけではないが、同助手がそれでも勝算を口にするのは昨年と明らかに異なる戦況だからだ。

「昨年は先行馬総崩れの差し、追い込み決着。その流れにあって、人気のアーモンドアイを4角で捕まえに行く競馬は相当タイトだったはずです。つまり4着ながらも中身は濃く、今年はメンバーも昨年ほど強烈じゃありません。何より最大のプラス材料は、馬を最も知るルメールさんが騎乗することですよね。さらに有馬記念はレース90分前に集合がかかるんですが、今年から80分前に短縮されたのも気性的に好都合。2着に終わったAJCCは熱発明けだったし、決して中山が苦手な馬ではないですよ」

 体調、鞍上、さらには相手関係までが好転するなら…。よもや意地でも“消耗品”とは言わせまい。さあ、信じるのはヒーローの誕生だ。世の男性軍よ、せめて一年の最後くらいは牡馬の雄々しきプライドに“男の夢”を託してみようぞ。