【JC】アーモンドアイが万感ラストランへ 唯一の懸念「中3週ローテ」にルメールは…

2020年11月24日 11時45分

カレンブーケドール(奥)に寄り添う〝姉御肌〟アーモンドアイ

「3冠馬3強決戦」として早くもバズりまくる第40回ジャパンC(29日=東京芝2400メートル)。その中でも話題のド真ん中にいるのは、前走の天皇賞・秋で芝GⅠ8勝の新記録を打ち立てたアーモンドアイ(牝5・国枝)なのは言うまでもない。いよいよ迎えるレジェンドホースのラストラン。長年、そばに居続けた「番記者」山村隆司は、ポエムを口ずさまずにはいられない。「今、万感の思いを込めてファンファーレが鳴る。今、万感の思いを込めて馬が行く。さらばアーモンドアイ。さらば“V9”ホースよ」。有終走をその目にしっかりと焼き付けろ!!

 あれは確か2年前の春、桜花賞の翌週のことだったと記憶している。国枝キュウ舎のトレーナールームを訪れたノーザンファーム天栄の木実谷場長が、感慨深げにこんな言葉を調教師に投げかけた。

「あの馬は競馬の神様からの贈り物ですね」

 むろん“あの馬”とはアーモンドアイ。言い得て妙である。一方で恐るべき慧眼だったとも言えるだろう。前走の天皇賞・秋で芝GⅠ8勝の金字塔を打ち立てたアーモンドアイとて、当時はまだ最初のGⅠ制覇を成し遂げたばかり。同年秋にジャパンCを世界レコードで制する姿さえ、すでに予見していたのかもしれない。

 とはいえ、そんな天授の名馬もいよいよ今週で“見納め”である。陣営が選択したラストランの舞台は、2年前に世界に名声をとどろかせた東京芝2400メートル。主戦ルメールをして「これまで勝ったGⅠの中でも一番強かった」と語るジャパンCがフィナーレだ。

 勝てば総収得賞金は19億円超。キタサンブラックを抜き歴代トップに立つと同時に、JRA年度代表馬の座もかかった大一番。「前走でレジェンドホースになりました。今回はボーナスです」(ルメール)の言葉もまた言い得て妙ではないか。

 多くのファンが危惧しているのは、中3週のローテーション。記憶によみがえるのは中2週で挑んだ今春の安田記念(2着)の残像だろうか。

 先週20日の1週前追い切りは、帰キュウの翌々日とはいえ、南ウッド5ハロン67・4―12・7秒と控えめな数字。前を行く僚馬に体を併せることなくゴールした。手綱を取ったルメールは「わざと追いつかなかった。今回で一番大事なのはリラックスさせることだから」と伝えたのだが…。やはり懸念されるのは激走した天皇賞・秋のダメージ。案外やりたくても攻め切れない? そんな周囲のざわめきを番頭格の鈴木助手は次なる言葉で封殺してみせた。

「安田記念はゲート裏で一気にテンションが上がってしまい、レース後にルメールも“調教を失敗した”と悔やんでいた。思えば昨年の有馬記念(9着)もそう。勝ちたい気持ちが先行して、人間サイドが馬を追い込み過ぎたのが良くなかったんだよね。むろん、今回はそれを踏まえての調整。大事なのは馬を信じること。前走だって美浦では500キロ近くあったのに、競馬場に到着してから自分で(490キロの)体をつくってしまうんだから。カイバだって食べてないわけじゃないのに…。ホントすごい馬だよ」

 史上初めて3頭の3冠馬が一斉に集う夢の競演。歴史に残る“3強決戦”に周囲が沸き立つのも当然だ。それでもルメールは極めて冷静に、そしてきっぱりとこう語る。

「デアリングタクトは強いです。オークスのラストの脚はすごかった。コントレイルもまだ負けていないし、リスペクトします。でもアーモンドアイはずっとGⅠレベルでトップを走ってきた。とても珍しい馬です。3歳馬にも、その強さを見せたいです」

 今年すでにJRA・GⅠ7勝を挙げる名手をして、アーモンドアイはやはり“別格”なのだ。ゆえに無敗の3冠馬2頭すら、過去におけるライバルたちと立ち位置は変わりないのだろう。

 管理する国枝調教師が今回、一貫して口にするのは「とにかく無事に送り出して、無事に走ってくれれば」。これは無欲というより、おそらく感謝の表れ。そして口には出さずとも、無事ならおのずと結果はついてくる――。そう、我々は“神からの授かり物”の走りを、ひたすら目に焼き付けるだけだ。