【菊花賞】無敗3冠コントレイルに感謝! 福永祐一が明かす「クビ差の真実」

2020年10月26日 11時00分

無敗3冠を達成したコントレイルと福永祐一

 25日、京都競馬場で行われた牡馬クラシック最終戦・第81回菊花賞(芝外3000メートル)は圧倒的人気のコントレイル(牡・矢作)が勝利し、史上3頭目となる無敗の3冠馬に輝いた。クビ差の辛勝は05年の父ディープインパクト、11年のオルフェーヴルなど圧勝した過去の“先輩”に比べてこれほど苦戦した3冠馬はいなかったのではという内容だったが…。その実態はコントレイルの評価を落とすものではなく、むしろ同馬の違った側面を引き出したもの。レース後の鞍上・福永祐一の言葉が“菊花賞の真実”を物語っている。

 見守った矢作調教師、騎乗した福永ともに「疲れました」が第一声だった3冠最終戦。2着アリストテレスにクビ差は、他を圧する瞬発力で皐月賞&ダービーを制したコントレイルの姿とは違った。「正直に言えば、今回は上手に乗ってあげることができませんでした」と苦しい戦いを総括した福永の言葉に集約されている。この一戦はコントレイルにとって“ベスト”ではなかった。

 僅差の競馬になった理由は距離適性の問題だけではなく、開幕週から馬場が荒れ、誰もが内を避けて通る特殊な展開も影響したと福永は語る。

「馬群がバラつき、スペースができてしまうとコントレイルのような反応のいい馬は行きたがってしまう。加えて斜め後ろにいた2着馬がずっとプレッシャーをかけてきていた。彼(ルメール)からすれば相手は僕の馬だけ。当然のことをしているんですけど、そのプレッシャーに対する力みもあって、息を抜くところがないままでレースが進んでしまったんです」

 それでも4コーナーで進路を確保した時には「自分の仕事はこれで終わった。これまでと同じように突き放してくれる」と思ったという福永だが…。「突き放すどころか手応えもあまり残ってなかった。タフな競馬を強いていたことに気付くと同時に、その状況から最後まで抜かせなかったコントレイルの精神力には頭が下がる思い。このような馬に自分は乗ったことがありません」

 コントレイルは他のディープインパクト産駒と同じように、父譲りの非凡な瞬発力が最大のセールスポイント。それが「これほどまでの精神力も兼ね備えていることは珍しい」と福永は言う。そして、この菊花賞こそがクラシック3冠で「最も印象に残った一戦」と締めた。それはコントレイルのすごさを再認識したという意味だ。

 父ディープインパクトに続く無敗での3冠達成に「海外でも非常にまれなこと。その鞍上に自分がいることを誇りに思う」と自負した福永だが、コントレイルと自身との比較に対しては「偉大な父(福永洋一元騎手)を持つという意味で自分とコントレイルはかぶるかもしれませんが、自分はたくさんの方の支援を受け、その縁を大事にしてきたことでこのような結果を残せたにすぎない。まだまだ技術を磨き、あの馬を楽に走らせることができるようにならなければ…。そう強く思ったレースでした」。

 父が達成できなかったダービー制覇だけでなく、3冠騎手の栄誉まで手にした福永。円熟の域に達したベテランが自分の騎乗ミスを認め、さらなる向上を誓った事実。圧倒的な強さを誇示したレースではなかったからこそ判明したコントレイルの奥深さ。これまでの3冠馬とは違うドラマで最終戦を締めくくったコントレイルもまた、未来に語り継がれていく名馬だろう。わずかな人数とはいえ、この勝利を分かち合えた現地の競馬ファンがいたことも、過去2戦と違う印象を持った原因かもしれない。

「2着馬が来て“マズイ”と思った時に直線でお客さんの声が聞こえたんです。確かに聞こえました。そして、それが力になった。馬を信じ抜かなくちゃいけない。お客さんの声がそう思わせてくれたんです」

 そう語った福永の言葉に、この日の会見で一番の重みがあった。