【菊花賞】2005年ディープインパクト池江敏行助手「3歳同士では絶対に負けられないプレッシャーがあった」

2020年10月20日 16時15分

コントレイルの父でもあるディープインパクトは直線で楽々と突き抜け、無敗で3冠タイトルを手にした

【陣営が証言する3冠前夜・ディープインパクト】「いろいろなものを背負ってプレッシャーはあったけど、とにかく無事に出走にこぎつけるだけ。本当にそれだけだった」

 携わった者たちの宿命とはいえ、主戦の武豊よりもディープインパクトの背中を知る調教パートナーの池江敏行助手は常に極限の緊張感の中にいた。調教においても一つのミスも許されない状況下で、どのレースにも同じような気持ちで臨んでいたが、やはり無敗の牡馬3冠がかかった菊花賞はもちろん、その前哨戦の神戸新聞杯の前から、とてつもないプレッシャーを感じていたという。

「(武)ユタカが〝1200メートルでもいい競馬ができる〟と言っていたくらいで、ダービーが終わった後、このままでは短距離馬になってしまう可能性があった。それで栗東から移動した札幌競馬場では菊花賞を見据えて我慢を覚えさせる調教をさせたんだ。毎日のように我慢させるものだからディープ自身が他馬を追い抜かなくていいと思ったみたい。神戸新聞杯の直前あたりから稽古でまったく動かなくなって…。市川さん(担当厩務員)と〝失敗だったかな〟〝まずいんじゃないかな〟って話していたくらい、半信半疑の状態だった」

 そんな中で迎えた秋初戦の神戸新聞杯を2馬身半差の快勝。2人は胸をなでおろしたのだが、菊花賞の1週前追い切りの動きが再び不安をかき立てることになる。

「併せた1勝クラスは馬なりなのに、こちらは押して押して何とか先着した感じ。油断したらビュンとどこにでも行ってしまいそうな、あのディープがまったく動かなくなった。自信がなくなって、焦りしかなかった」

 すさまじい重圧の中で迎えた運命の菊花賞は1周目のスタンド前をゴールと間違え、頭を上げて行きたがるシーンはあったものの、鞍上がなだめるとスッと折り合いがつき、その後はいつものディープの走り。危なげなく2馬身抜け出し、無敗の牡馬3冠を見事に達成した。池江助手の不安は結果だけを見れば杞憂に終わったわけだが、当事者たちの葛藤が我々の想像を絶するものだったことは想像に難くない。

「賢い馬だから調教で無駄なエネルギーを使わなくなったのが、ちょうどそのころだったんだろうね。まあ、馬のほうは余裕があったってことなんだろうけど、人のほうは必死。3歳同士では絶対に負けられないプレッシャーがあった。コントレイルはディープとタイプは違うにしても、神戸新聞杯が完璧な内容。3冠はもちろん、ディープが果たせなかった凱旋門賞制覇も託したくなるような馬だよね」

 偉大な父をも超える可能性を秘めたコントレイルが父の成し得なかった世界最高峰の舞台で頂点へ――。そのためにもまずは牡馬3冠を圧巻の走りで制したディープインパクトの衝撃をも超えるパフォーマンスを、今週の菊花賞で披露してほしい。