【菊花賞】11年オルフェーヴル 平常心の裏付けになったのはダービー制覇

2020年10月19日 16時20分

オルフェーヴル(左)は4角3番手という積極策から後続に2馬身半差の完勝だった

【陣営が証言する3冠前夜・オルフェーヴル】コントレイルの圧勝で幕を閉じた菊花賞トライアルの神戸新聞杯だが、骨折明けだったダービー3着馬ヴェルトライゼンデは直線で鋭く追い込んで0秒3差2着と健在ぶりをアピール。池江調教師も「3冠取りを指をくわえて見ているわけにはいかない」と打倒コントレイルに改めて闘志を燃やした。

 流れ的にはウインバリアシオン(ダービー2着)がオルフェーヴルの3冠阻止に挑んだ11年の菊花賞に似ているが、今回は当時の鞍上だった池添と池江調教師が挑む側。オルフェーヴル以来の3冠馬誕生を阻止すべく、菊花賞に向けて厩舎サイドは一丸だ。

 では迎え撃つ側だった9年前はどうだったのか? 当時、オルフェーヴルを担当していた森澤光晴助手の答えは「特別なことはせず、いつも通り淡々と」というものだった。

 気性の激しさは、あまたのエピソードからよく知られているが、同助手は「調教や競馬…とにかく走ることに関しては真面目な馬。暴れたりすることがなかったわけではないですが、皆さんが思うほどやんちゃな馬でもなかったですよ」。そして森澤助手の話から感じたオルフェーヴルの最大の長所は、いわゆる〝無事これ名馬〟という最も基本的なことだった。

「とにかく体質の強い馬で、脚元の不安も引退するまで皆無。だから状態面は常に安定してましたね。気性的な難しさ、我の強さがあったことは確かだけど、それは走る馬なら共通して持っていると思います」

 安定しているがゆえに、神戸新聞杯(1着)からいよいよ3冠制覇が懸かる菊花賞に向かう時も、いつも通り淡々と過ごしていたそうだ。

「状態が悪ければ、いろいろと考えることもあっただろうけど、一度使って普通に良くなっていたので何の心配もなかったですね。とにかく無事に過ごすだけ、という感じ。特別なことは何もしてないですよ」

 その平常心の裏付けになったのはダービー制覇だそうだ。

「皐月賞からダービーの過程で特にアクシデントなどもなかったから普段通りやっていただけ。でも、ダービーを勝てたことで自分の中で自信を持てました。そこからはどっしりと構えられましたからね」

 菊花賞直前、森澤助手は池添に「自信を持って騎乗してほしい」とだけ伝えたという。それだけオルフェーヴルの状態に自信を持っていたということだろう。

「だって僕らはゲートが開いたら何も関われないわけですから。そこまでが仕事なので。競馬は馬とジョッキーがやるものですからね」

 変に気負わずに、普段通りのルーティンをこなし、状態を整えて競馬に送り出す。そこに特別なストーリーやドラマはいらない。なぜなら、ドラマは馬とジョッキーがレースでつくるものだから。そこには森澤助手の厩舎人としてのプライドが感じられた。

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