【GⅠ秋華賞】デアリングタクトの3冠阻む〝2恐馬〟

2020年10月13日 11時00分

デアリングタクトと杉山晴紀調教師(右)、

 絶対女王相手では3本の矢でも心もとない。まして2本の矢では…。いやいや、牝馬3冠最終章の第25回秋華賞(18日=京都芝内2000メートル)に送り込む手塚厩舎の2頭は超強力だ。オークス2着馬ウインマリリンに、チューリップ賞&紫苑Sの覇者マルターズディオサ。攻略の難しいトリッキーな舞台でも、自在に動ける機動力を武器に、デアリングタクトに一泡吹かせてみせる――。

「内回りの多頭数競馬はどうしても展開のマギレがあるからね。勝つには(実力だけでなく)運も必要になってくるんじゃないかな」

 ウインマリリン、マルターズディオサの有力2頭を送り出す手塚調教師は、大一番を前に不敵な笑みを見せた。
 もちろん、無敗の牝馬3冠を目指すデアリングタクトの強さは百も承知。それでも、自身が経験した2009年秋華賞(ハシッテホシーノ、パールシャドウの2頭出し)では、単勝1・8倍の支持を集めたブエナビスタが敗れる姿(2位入線→3着降着)を間近で目撃している。

 いかにロスなく立ち回れるか――。これこそが3冠最終戦の舞台では何より重要。実際、秋華賞の1番人気馬の勝率は3割にも満たないのだから“魔物がすむ舞台”なのは確かなのだろう。

 第2冠オークスでデアリングタクトを最もヒヤリとさせた馬といえば、半馬身差の2着に粘走したウインマリリンだったことは記憶に新しい。あれから5か月…。手塚調教師は逆転の可能性を、馬自身の成長と舞台設定に見いだしている。

「遅生まれ(5月23日)の馬ですから、本当に完成するのは来年だろうけどね。背が伸びて10キロ以上増えた体で牧場から戻ってきた。この馬の武器はスピードの持続力。中山も上手だし、適性的には京都の内回りは悪くない舞台だね」

 指揮官がそう語る通り、芝2000メートルで挙げた3勝のうち2勝は中山内回りでのもの。その自在性と機動力がいかに武器になるかは「以前に“GⅠで一番チャンスがあるのは秋華賞”と(横山)タケシは言っていた」(担当の藤井助手)の言葉に集約されようか。付け加えれば、もうひとつのキーワードたる「運」も持ち合わせている。

「当初はトライアルからの始動予定が、肘腫の切開手術で変更に。それでも放牧明けのミモザ賞を完勝した通り、久々を苦にしないタイプだし、逆に成長期にしっかり休ませた分、馬はすごくフレッシュでいい感じ。むしろぶっつけで良かったと思えるほど仕上がりはいい」(手塚調教師)とムードは最高潮だ。

 一方、中山内回りのトライアル・紫苑Sを制したマルターズディオサにも不気味さが漂う。春2冠は桜花賞8着→オークス10着と精彩を欠いたが、これには確たる理由がある。

 担当の中條厩務員が「調整がうまくいかなかった」と打ち明ける通り、良かれと思ったチューリップ賞勝ち後の栗東滞在策が裏目に。環境になじめず馬がイライラし続けたことで桜花賞は4キロ減、(美浦に戻った)オークスもさらに6キロの馬体減…。つまりは「運」がなかった。12キロ増で挑んだ前走こそ、本来の姿というわけだ。

「数字が変わらない中で体が引き締まって、今回は初めていい状態でGⅠに使えそうだね。スタートが安定した今は組み立てが楽だし、何なら今回は逃げてもいい。地力自体は(ウイン)マリリンと互角だからね」(手塚調教師)

 桜花賞→NHKマイルC連続2着のレシステンシアを、チューリップ賞で完封した実力馬が完全復活したとなれば…。

「ストップ・ザ・デアリング」に燃える手塚2騎の機動力から目をそらすのは危険かもしれない。