【秋華賞・デアリングタクト偉業への戦略】史上初牝馬無敗3冠へ!杉山晴師「夏負け説」笑って一蹴

2020年10月12日 15時00分

杉山晴紀調教師とデアリングタクト

【〝闘券〟難波田記者が迫る・デアリングタクト偉業への戦略①】秋のGⅠ再スタートは、JRA史上初となる無敗の牝馬3冠に挑むデアリングタクトで一色ムードの第25回秋華賞(18日=京都芝内2000メートル)。大偉業へのチャレンジが刻一刻と迫っているが、果たして不安材料はないのか? 中間は「夏負け説」もネット上で話題になったのは記憶に新しい。厩舎密着の闘券・難波田忠雄記者が週末までの連載で無敵のデアリングタクトを丸裸にしていく。

 デビューから4戦4勝。そのすべてを上がり3ハロン最速で圧勝した3歳女王が大きくクローズアップされたのは2戦目のエルフィンSだった。勝ち時計1分33秒6は、07年のウオッカ(1分33秒7・日本ダービー、ジャパンCなどGⅠ7勝)を上回るレース最速。数字もさることながら視覚的なインパクトも絶大だった。

 杉山晴紀調教師の同馬への自信は確信へと変わった。トライアルをスルーしてのクラシック参戦がそれを物語っている。

 春の2冠をサッと振り返っておこう。桜花賞は先行馬2頭が2、3着に入った流れを、後方から直線だけでねじ伏せてまずは1冠。デビュー3戦目での桜花賞勝利は1980年のハギノトップレディ以来、40年ぶりとなる最少キャリアタイ記録となった。

 単オッズ1・6倍の断然人気となったオークスは他陣営のマークが厳しく、直線に向いても前がふさがる絶体絶命の状況。それでも残り300メートルを過ぎたあたりでわずかに前が開くと、そこから一気に先団をのみ込んでVゴール。57年のミスオンワード以来、63年ぶりとなる無敗での牝馬2冠制覇を達成した。

 18年のセレクトセール1歳で1200万円で落札された若駒が、3歳牝馬の頂点に立つシンデレラストーリー。牧場や厩舎など多くの関係者が彼女を愛し、育ててきたことが大きな結晶となった。そして大偉業へ。注目された秋の始動戦は、春同様に「直行」という選択肢を陣営は選んだ。

 オークス後は宇治田原優駿ステーブル(京都)→ノルマンディーファーム小野町(福島)を経由して北海道のノルマンディーファームへ。約3週間、ゆっくりと充電され、その後は逆ルートで9月2日に栗東トレセンへ戻った。ただ、その間にちょっとしたウワサがファンの間やネット上を駆け巡る。

「夏負け説」

 8月下旬に所有するノルマンディーサラブレッドレーシングから秋華賞への直行が発表された前後だ。その発端となったのが500キロ近くまで増えた馬体重だろう。464キロでデビューし、その後の3戦はいずれも466キロ。エピファネイア産駒で気性が激しくて春先は馬体減がなかったのが不思議なくらいだったが、これだけの急激な馬体増となればいろいろと勘繰りたくなるもの。杉山晴調教師を直撃すると、真っ向から否定された。

「夏負けなんてしていないですよ(笑い)。北海道に放牧に出したことでこちらが思っていた以上に馬体が大きくなったんです。正直なところ、ここまで数字として表れるとは思っていなかった。これだけ大きくなった体をレースに向けて仕上げていくには地道なトレーニングを時間をかけてやる必要がある。ローズSでは間に合わないと判断したので8月中旬には直行を決めました」

 ネット上の不安説を一蹴したうえで、肉体面の成長が予想以上だったことは“うれしい誤算”となった。帰厩してからはほぼ毎日、坂路で基礎的な部分から鍛えて徐々にピッチを上げている。追い切りは3週前から主戦・松山が騎乗。春先はジョッキーが乗るとテンションが一気に上がることもあったが、追うごとに落ち着きが出てきた。追い切り前の角馬場での調整もゆったりとしたもので、課題としてきた気性面の成長も顕著だった。

「今は480キロ台で推移し、理想的な調整ができています。鞍上もうまくコントロールしてくれてますけど、競馬へいくとどうしてもリミッターが切れるところがありますからね。ただ、ここにきてオンオフの切り替えができるようになっているのを感じる。あとはレースでも4角までリラックスして走れて直線だけ爆発できれば何も言うことはないんですけどね」

 同師の求める次元は高いが、それをクリアできるだけの成長を遂げて進化しているのも確か。まずは3冠制覇だが、ここに大きな課題がひとつ残っている。秋華賞は「京都芝内回り2000メートル」というまぎれが多い舞台設定。多くの名牝がここで涙をのんだ波乱の歴史があるからだ。(つづく)